文(リボーン)

□Un'allodola di visita
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腐ってもマフィアのボスと言った所か、俺の自室はそれなりに広い。
そこを埋め尽くすのは、故国を懐かしむ俺の趣味で集めた、日本人デザイナーの家具、日本語の本、CD。
愛おしい俺の「日本」たちが今、遠慮のえの字もなく二本の鉄棒にぶっ壊されている。

持ち主の口角が、今この上なく上がっているのが見なくてもわかる。
こういうシーンで、この10年ずっとそうだったからだ。
獄寺君が置いていってくれた小さな爆弾を後方にぶん投げながらなので、煙幕に隠れて見えないが。

「待ちなよ。」

待つ訳ないだろ。
山本のバットよ、どうか雲雀さんの頭にヒットしてくれ。
・・・やっぱダメか。トンファーに弾かれたのだろう、ホームランバットが遥かな出窓から遠征試合へと旅立った。

ついにこらえきれなくなったのか、雲雀さんが小さく声を立てて笑い始めた。
まるでホラー映画。
ちょうど良く俺の広い部屋にも逃げ場はなくなった。

ドン!
背中に壁が当たる。
と思った時には、トンファーで首を縫い止められていた。
ちくしょう、なんて早さだ。

「何してるの?君の草食動物ごっこには10年前に厭きたよ。」

ギラギラ光る二つの黒曜石みたいな眼は雲雀なんて可愛い物じゃない、猛禽類だ。鷹だ。虎だ。

俺の頭をガッチリ掴んでるのは鷲の爪か・・・いだっ!ぶん投げられた。
毛足の長い絨毯に俺のくぐもった呻き声が吸い込まれる。
のしかかる雲雀さんが、トンファーごと俺の両手を床に押さえつけた。
びくともしない。この細い身体のどこにそんな力があるんだ。





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