文(リボーン)

□零地点突破
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カア、カア、と鴉が鳴いている。
ふ、と息を付いた。
雲雀は、校舎の屋上から見る夕焼けが好きだった。刻々と表情を変える自分の町を眺めていると気持ちが落ち着く。
夕方に校内を回った後、屋上で景色を眺めるひと時は、仕事の多い雲雀が気分を入れ替える日課になっている時間だった。
そろそろ戻ろうか、と考えていると、

「おい。」

後ろから不躾な声をかけられて途端に機嫌が急降下する。誰だ。

「何呆けてやがる。」

振り向いて、雲雀は目を見開いた。
綱吉だ。
いや、本物だろうか。
確かに顔は綱吉なのだが、表情が違うせいで同じ顔に見えない。
嗤っているのか定かではない唇の歪め方で、ヘッとガラの悪い声を出している。
濁った目線は自分を見ているのか、空を眺めているのか。

「どうしたの、君・・・・。」
「どうしたもこうしたもねえよヒック。」

ペッ!と音高く唾を吐きながら、左手に持った焼酎瓶を煽った。
喉を鳴らして流し込む液体にゲフッと下品な息を付いている。
これだ。雲雀の瞳が剣呑に光った。

「飲んだね・・・。校内で飲酒とはいい度胸だ。」
「はん、ピーチクうるせぇアホ鳥だな。」

いつもならビクビク怯えて遠巻きにするくせに、ずんずん距離を縮めてきた。いわゆるメンチを切る、あのポーズで雲雀を斜め下から睨みつけてくる。
ぐっと手を掴まれた、と思う間に、

「・・・・!」

べろ、と舌を伸ばし、唇を合わされた。


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