文(ハガレン)
□チャイルド・プレイ・エキゾチカ
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「できたぞ、アル。」
割烹着の袖を抜き、ちゃぶ台にランチを並べながらエドワードママが息子に笑いかける。
絨毯にちゃぶ台、雪駄は履いたまま正座でママとランチ。
色々と東洋について誤解があるのは極東文化が正しく伝達されていないからであって弟兄に非は無い。
だから、アルフォンスが対面では無く母と隣り合って座ったのもそういうものだと誤解しているだけに違いない、お互いの腿まで密着するほどぴったりしているが。
「ああああアル。ちょっと近過ぎないか?」
珍しく常識的な発言をするエドワード。さすがは母だ。
「だってママに甘えたいんだもん。ママ、ありがとう!おいしそうだね。」
ママが作ったのは浴衣に微塵もマッチしないビッグハンバーグ定食だが。
「ねえママ。お願いがあるんだ。」
もじもじ。
「あーん、して?」
「バ、バカ!オマエはもう大きいだろ?」
「あー、ママ真っ赤だよ。あーんしてくれるまでボク待ってる。あー・・・」
座高の低いエドワードのために少し身を屈めて、浴衣の合わせからちらりと胸板を覗かせながら、濡れた口を開けてママの手料理を待つ。
ママは息子の愛らしさと頤から胸の男くさいラインにもう目の前が真っ赤に染まっている。
・・・自分を良く知るアルフォンス、クリティカルヒットの艶男(アデオス)攻撃だ。
「…わかったよ!あーん、だな?」
必死で目を逸らしたエドワードママがうつ向いてハンバーグを切り分ける。
高く結い上げたママの金髪がサラリと分かれ、上気した項から香油が立ち上ってアルフォンスを暝酊させた。
ママは無自覚によそ見運転の艶女(アデージョ)攻撃だ。
…ぜってー今日こそ食ってやる。
固く誓うなアルフォンス、母子ごっこではなかったのか。
色々気付かず、大きく割れた袖口を肘まで落として、しなやかな腕を持ち上げたママが息子に食事を与える。
「は、はい、あーん。」
「ママ、震えてるよ。寒いの?」
箸を持った腕を捕らえてちゅ、と音を立てながらアルフォンスが唇を落とす。
崩した足が浴衣を蹴って、アルフォンスの形良い踝がエドワードの目に入った。
「やめろって!オ、オレもう・・・!」
浴衣ってヤツはなんでこうエロくさいんだ!
もう瞳を開けていることもできない。
低音を効かせてアルフォンスが囁く。
「浴衣っていやらしいね。ボタンもジッパーもせずに、紐だけで布を留めて身体を隠してるなんて。脱がすために作ってあるみたい。」
ゆっくりと、抵抗の緩いエドワードの身体を横たえる。
浴衣の裾が簡単に捲くれ上がるのを良い事に、膝を割ってエドワードの上に伸し掛かった。
「だ、だめだよアルフォンス。お前今日は実の子だろ・・・。」
「じゃあ可愛い息子にママのこと教えてよ。」
こういうおままごとを狙っていたのか。
近親相姦AVまがいのセリフを吐いてアルフォンスがエドワードの頬を撫でる。
体の下にあるエドワードを見下ろす、甘い甘い笑顔。
「ア、アルフォンス…。」
横から伸びた手が、アルフォンスの手ごとエドワードの頬を撫でる。
「ママとアルフォンス…。」
二人を見下ろす、きもいきもい笑顔。
「「うわぁあ大佐だぁ!」」
ロイがエドワードとアルフォンスの手をまとめてにぎにぎする。
「いつからいたんだよ!?」
「うむ、『お前も脱げよ』あたりからだ。さっきから何をしているんだ、珍妙なスタイルで・・・珍妙・・・でもないな・・・。」
嘗め回すように二人を見て嘆息する。
「双子の人形のようだ。何とカワイイ。」
おぞぞぞぞぞ。
鳥肌とじんましんで思考停止のエドワードを背に庇ってアルフォンスが叫ぶ。
「いやだこわいこっちみないでへんたいしょうにせいあいしゃ!」
アルフォンスが懐から黒光りする拳銃を取り出す。
着流しと相まってまるで極道だ。
「食らえ!BB弾!!」
「あだだだだ!火薬!火薬入ってるのはBB弾って言わない!」
意識の戻ったエドワードがすかさず錬成したごんぶとワイヤーでロイを拘束する。
息もつかせぬ弟兄のコンビネーション技は本日、久々の本気を見せた。
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ニキータって雑誌知ってますか?
毎回毎回、「小娘に勝つ!」みたいなハリキリ丸出しのコピーが売りのキャリアウーマン系ファッション紙です。
もー…いつも当て字に大笑い。
「艶男」「艶女」もそこからいただきました。「時計美女(トケータ)」なんてのも(笑)