泣ける2ちゃんねる

□仕事の話
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■封筒■



俺が結婚記念日4周年を迎えた日に皮肉にも俺が働く会社ではトラブルが発生し下手すれば、会社の全社員が寝泊まりする忙しさだった。

そんななか
『結婚記念日があるから上がります。』
なんて言える状況ではないのは十分承知で、半ば、結婚記念日はまた別の日にしようとカミさんに電話しようと思ったその時だった。


K上司に「○○(俺の名前)くん!すまないが、この封筒を直ぐにG会社に届けてくれないか?」と言われた。G会社は俺の会社のお得意さんだがG会社があるのは隣県にある。俺の会社からだと行き時間だけでも3時間もかかってしまう…


上司は「これが終わったら上がって休んでいいから」と言われたが結婚記念日を害されて気分を悪くしていた俺は露骨に嫌な感じで「はい。分かりました。」と愛想の無い返事をした。

封筒を手渡したK上司も普段とも変わらぬ優しさだったが少し痩せている様な気がした。


が、苛立ちを感じてた俺は封筒を奪いとる様に中身を確認しようとしたがK上司が急変した様に「時間が無いんだ!車の中で確認してくれ!」と怒鳴られてましった。


会社の中は一瞬沈黙のムードが流れたが、また騒がしさを取り戻した。滅多に怒らないK上司に怒られ完全にキレていた俺はその場を静かに立ち去り乱暴に車の中に乗り込みK上司の愚痴をこぼしながら封筒を見た。


そこには一枚の紙が入っており【いつも真面目に働いてくれて有難う!今日は結婚記念日だろう?今日は奥さんとゆっくり過ごしなさい。仕事は私に任せなさい。お疲れ様。Kより】とK上司の文字で書かれていた。

俺はその紙を見た時に恥ずかしさと嬉しさを感じ泣いた。K上司に怒られK上司の愚痴を零した自分を怨む様に、またK上司の優しさが伝わってくる様で益々泣けてきた。


その日は無事にカミさんと結婚記念日を迎える事が出来て外食をしていたがK上司の件をカミさんに伝えると

カミさんが泣きだし「本当に嬉しいね…私達の為に無理してくれて…」とカミさんが述べ、私は不意に痩せたK上司の優しい笑顔を思い出してしまい、俺もまた泣いた。結婚記念日だと言うのに夫婦揃って泣いていた…


翌日、俺は前日以上に仕事に打ち込んだ。愛する妻の為。また信頼でき尊敬ができるK上司の為に人一倍働いた。その甲斐あって会社は安定した。


しかし5年後、K上司は亡くなった。一ヶ月前、入院をするが見舞いには来なくていいと皆に告げたのが最期の姿だった。俺は不思議と涙が出なかった。同じ課に属する同僚もだ。信じられなかった事もあるのだろう。あんなに元気だったのに…


しかし葬式が終わり後日会社に出勤するとK上司の奥さんが居た。奥さんは同僚のひとりずつに手紙を渡していた。私も手紙を受け取り中身を見た。そこにはこう書かれていた。


「○○くんへ。いつも真面目に働いてくれて助かっているよ。さて最近は私は体調が優れずにいるので未来ある君達に手紙を書いている。私が居なくなっても立派にやるんだよ。そして愛する家族の為頑張るんだよ。でもたまには羽根休みして家族と過ごすんだよ。最後になりましたが、これからも頑張って下さい。
追伸…あの時に怒鳴ってごめんなさいね。」


とあの時と同じK上司の優しい文字で書かれていた。そこで初めてK上司は亡くなったと悟った。俺は崩れながら泣いた。大声で怒鳴る様に泣いた。あとから皆も泣き始めた。いつもK上司に怒られ励まされながら、皆、K上司の元で働いた連中ばかりだ。


くじけそうになった時に勤務中にも関わらず相談に乗ってくれたK上司…
リストラの話が持ち込まれた時に社長に「うちの課で解雇を必要とする社員はひとりもいません。」と一人で闘ってくれたK上司…
歓迎会の時綾小路きみまろの物真似をして皆を笑顔にしてくれたK上司…


その全てが優しくて、その優しい上司はこの世にいないと思うと、また泣けてきて、いつまでも皆泣いていた。他の課のやつらも様子を見に来たが何かを悟ったのか静かに合掌をして去った。その日は社長がうちの課だけ休みにしてくれた。
皆で亡きK上司の机に寄り添うようにして悲しみを紛らそうと思ったが、机に目を向けた時にまたまた泣いた。一年間スケジュールのカレンダーに仕事のスケジュールと俺達、部下達の誕生日を書き込んでいたからだった

最後になったけど、この会社で働けて今も幸せです。そして貴方K上司。いや、Kさんの元で働けてとても幸せでした。長い間有難うございます。俺も、あの世に逝った時はまたお願いします。

今は、天国でゆっくりお過ごし下さい。
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