「星を見に行きませんか」
「星……?」
寒い寒い、
真冬の夜に。
○●星語る、うたかたの夢●○
「わぁ、すごい!」
遥か彼方に広がる空を見上げて、思わず感嘆の声を漏らす朔夜。
四方八方どこまでも続く空を残さず見ようと、くるくる方向転換をしている。
濃い夜に阻まれその顔をはっきりと見る事は出来ないが、難なく想像がつくようだ。
「綺麗だね……」
うっとりと、呟くような朔夜の声が、静寂に凍る空気を伝う。
小高い丘の上。
見上げた空は果てしなく遠く、散りばめられた星達に限界は無いのだろう。
綺麗、と言うのだろうか。
「星は、光です」
「…名前のある光なんて、素敵じゃない」
「ですが――」
所詮光は光だと。手には入らないし、触れる事さえ出来ないのだ、と。
言い掛けてやめたのは、唐突に感じた左手の温もりだった。
「……手、冷たいでしょ?」
「はい」
「そんな薄着してるからだよ」
「…すいません」
いつもの格好に赤いマフラーを巻いただけのL。
凍てつくような真冬の夜に有り得ないだろうその服装は、全てLの思惑なのだけれど。
「…嬉しい」
「何がですか」
「なんかすごく……すごくLを近くに感じる」
本当は抱き締めてしまおうと持ち上げた右手で、その頬に触れると、「冷たい」と言って顔を綻ばせた。
瞬間、星達が一斉にその瞬きを強めた気がして。
何億光年、何十億光年経っても届かない光たち。
綺麗、とか。
神秘、とか。
よく分からないが、そんな言葉達が良く似合っているんだと思う。
孤独に照らし続け、見下げるしか知らない星々は、見果てぬ夢を二人に見るのだろうか。
儚い、と。哀しむのだろうか。
「私も嬉しいです」
「…どうして?」
「朔夜さんが此処にいるから、です」
孤独を知って尚、その先を求めて止まない。
愛しさも幸せも、永遠に続くと信じて寄り添う、うたかたの二人の夢を――…。
END.
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祝・一周年♪
拍手有難う御座いました!
2008/1/31
かなごっち
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