子供の領分

□ランチタイム1(凍結中)
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蓮見高校に入って二度目の夏。
あと数日で夏休みに突入する為か、校内全体の殆どの生徒達が浮かれ気分で胸を弾ませていた。
それは茅野広海にも言える事で、四時間目の授業終了のチャイムが鳴ると同時にクラスメートである椎名克彦を連れ立って足取りも軽く教室を出て行く。
充実したランチタイムを過ごす為に二人が向かう先は、テニスコート脇のいつもの指定席。
誰にも邪魔されないお気に入り場所である。
二人が取留めのない話を並べ雑談しながら足を進めていれば、前方に小さな人集り。
賑やかな声に密集する人の群。
(なんだぁ?)
不審げに、目を凝らし訝る広海。
広海が前方を見据えて足を止めると椎名も足を止め広海の視線の先を追う。
何かと思えば…。
その人集りは、二年の学年カラーである黄色リボンを身に付けた女生徒達の群であった。
そして、その中心には、蓮見高校の『アイドル』こと新田薫が居たのだった。



「薫ちゃん!コレ食べて♪」
「コレ私が作ったの!」
「一緒にランチどうかなぁ?」
「新田くん。コレ美味しいよ!あげる♪」
「たまには教室でランチしない?」
「薫ちゃん。私のも食べて!」
新田に群がる女生徒達は、引っ切り無しに声を掛け食べ物で新田の気を引きつつランチに誘う。
声を掛けられれば返事を返し、新田は軽くお礼を言ったりキッチリ誘いを断ったりしていたが…自分を取り囲む女生徒達の異様な気迫に若干笑顔が引き吊り気味である。



「「‥‥‥‥‥‥」」
その光景を目の当たりにした広海と椎名は引き気味に黙り込む。
(なんつーか…。グレードアップしてねぇか?)
(新田、捕まっちゃったんだ。…俺。茅野と一緒で良かったよ)
既に、蓮見の生徒全体に茅野広海が女の『甘え』と言う無自覚な媚など一切通用しない『バリバリ硬派』と認識されている為か、校内で広海と共に行動している時は、新田にも椎名にもあまり近付いてこない女生徒達。
――『蓮見高校のトラブルメーカー』にして『凶悪な地雷原』等と言われる茅野広海に好き好んで近寄る豪傑な女は片手で数える程しか居ないだろう。
そのせいか…現在の新田が陥っている状態の様に、広海が傍に居ない時は、ここぞとばかりに女生徒達が周りにスグに群がり人集りが出来てしまうのだ。
椎名は、女生徒に取り囲まれるその光景を見る度に二学年になっても変わらず広海と同じクラスになれた事を心底喜んでいた。
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