小説2
□自殺志願者を救出せよ!
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あるマンションの一室の前で、うちはサスケは固まっていた。
インターホンを押すか押さないかの微妙なところで手を止めて全く動かない様子は たとえ女子がほっとかないイケメンであろうと変な人にしか見えないだろう。
しかしサスケは他者の目を気にしている余裕はない。
頭の中で巡る言葉は どうしよう だった。
そんなサスケが何故こんな事になっているのかと言うと、学校の帰り際に担任であるイルカにある頼まれ事をされたからである。
さぁ授業が終わったと教室を出ようと鞄を掛けたその時、あまりに唐突にイルカは言った。
「このプリント シカマルに届けてくれないか?」
「は? なんで俺が」
「家近いだろ?」
遠回りに嫌だと伝えても鈍感というか天然というかなイルカには通用しなかった。
当たり前のように理由を答えた担任に呆れながらもなんだかんだ世話になってるしとサスケはプリントを受け取った。
サスケがプリントを受け取った理由はそれだけではない。
シカマルといえば奈良シカマルだが、サスケとシカマルには接点らしい接点などない(イルカの言ったようにただ家が近いだけである)。
しかしサスケの中には、シカマルという人物がしっかりと焼き付いていた。
それはとても幸せそうに 仲間の真ん中で綺麗に笑う姿だったのだが、ある日を境に学校にはおろか街中でもぱったりと見かけなくなってしまった。
そんなシカマルに表面的には表さないものの、サスケは気になっていたのだ。
そして冒頭へ戻る。
もう何十分固まったままだろうか 変な汗がぽたりと垂れる。
サスケは止まった思考を無理矢理動かしてようやくインターホンを押した。
「………?」
何度かインターホンを押したが、返事どころか物音ひとつしないドアの向こうにサスケは疑問符を浮かべる。
居ない なんて事はないと思うがとしばらく考えた後、サスケはドアノブへ手を掛けてみる。
「…? 開いてる…」
簡単に開いたドアの奥をそっと覗き込み、恐る恐る中へ上がる。
本当にここにいるのかと疑うほど しんと静まり返ったその空間にサスケは息を飲んだ。
そんな時、サスケの耳に届いたのは微かな水音。
そしてその水音に導かれるように向かった先で目に映ったものは、出来れば夢だと思いたいものだった。
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