小説2

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休日だというのに いそいそと早起きをして。
普段全くと言っていいほどやらないおしゃれなんかしてみて。

今日はあの人と、ゲンマさんとデートなんだ。

鏡を覗き込んで 念入りに自分の姿を確認する。
ゲンマさんに少しでも可愛いって思われたくて何度も確かめる。
こんなとこ友達はおろか親に見られたら絶叫ものだ。
何度目かの確認をしてから、俺はカバンを引っ付かんで家を出た。

今考えれば、浮かれていたんだと思う。

待ち合わせ場所に向かう途中で、つけてくる奴らに気が付かなかった。
それがこの間の ゲンマさんと出会った時の奴らだということも。
すぐ 真後ろまで迫っていたことも。



「…………ッ!!?」



突然口を塞がれ狭い路地へ引っ張られる。
腕を押さえられたまま壁に押し付けられて、まずいなと頭の隅で考えた。
自慢じゃないが腕力に関しては幼なじみの女子にすら負ける。
正直 目の前の奴らには人数もいるし勝てる気が全くしない。



「殴るなら殴りゃいいだろ」

「んな事しねーよ」

「はぁ?」

「コイツがさ、お前の顔好みなんだってよ」



にやにやと下卑な笑いを満面に浮かべながら近づく男に、嫌な汗が出る。
伸びてきた腕に ぞわっと鳥肌が立った。



「いやだっ……!!!」



叫んだ言葉は闇に消えた。




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