小説2

□blue heart
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意識がふわふわする。
体がすごく軽くて まるで重力なんてなくなってしまったかのような、そんな錯覚。
ぼんやりとする世界は俺以外なにもなくて 夢なんだと理解するのは遅くなかった。



「(どーせ夢ならいいモン見せてくれりゃいいのに)」



メンドクセーものが一切ない世界。
それはそれで気が楽ではあったものの、なにかいい事起きないかなぁ と期待するのが本音。
かと言って具体的になにが欲しいとか見たいとかってのはこれっぽっちもないんだけど。

まるで無重力な空間を浮かんでいると、ぽつんと顔に水滴が当たった。
重力らしいものはないハズなのに、まるで雨のようにぽつん ぽつんと降ってくる。
俺は何かを考えるよりも先に その雫の垂れるほうへと向かっていた。

先に進むにつれて、景色はだんだんと暗くなる。
どこか物悲しくて 寂しくて、俺の夢の筈なのに なんだか自分のものとは思えなくて。
闇に近いその世界で 見つけたのは子供の姿だった。



「……カカ シ?」



長い銀の髪に、鼻まで覆ったマスク。
10歳くらいだろうか。
いったいいつからマスクつけてるんだろうとか 昔っから目つき悪いなぁとか、思う所はたくさんあった。
けれど、開かれた互いに違う瞳から流れる雫に 俺は言葉を失っていたんだ。



「(俺が知ってるカカシは)」



カカシは 掴めない性格してていつもへらっと笑って何考えるかなんてわからなくて、変態で甘えたがりでぐーたらで。
でも、昔からそうだとは限らないだろう。
目の前にいるカカシは、何考えるかはわからないけど 笑わないし。
きっと甘えたりなんて した事ないんだろう。


はらはら ぽろぽろ

僕は流れる雫をすくえますか。


俺は気が付いたら、幼いカカシをこの腕で抱きしめていた。
きょとんとするカカシに、腕の力を強めた。



「今は 俺のが大人だから、アンタは俺に甘えてろよ、カカシ」



夢の中では感覚はないとよく言われるけれど、ぎゅうと抱きしめたカカシは とても温かかった。





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