小説2

□DESTINIES MEMORY
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――…運命の歯車は 時として容易に壊れてしまうものである…――






















愛した人は敵対する兵士だった。

それを知ったのは付き合ってすぐの事だったけれど、それでもその人を愛していた。

早く戦争が終わって なんのしがらみもなくふたりが逢えるようにと、子供みたいな願いを抱きながら 幾度となく隠れて逢う。



たくさん笑った。

幸せだった。


けれど神は そんなふたりを嘲笑うかのように、最悪な状況を創り上げる。



黒い雨が降る中で、向けた銃口は震えてやまなかった。

頬に伝う水滴が 自分の涙なのかそれとも雨なのかわからないまま、重い引き金に指を掛けて。

最後に見たあの人は、とても悲しそうに 優しく笑う。



『またいつか、巡り逢えたら』



渇いた音が空に響きわたると同時に、あの人の体も地面へ倒れる。

動かなくなった愛しい人。

どうして俺たちは出逢ってしまったのだろう。

全ては神の掌の上 暇つぶしの道具でしかないのなら。



「…俺が、全部 終わらせてやる」



どこかで何かが壊れる音が聞こえた。




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