小説3
□sweet・sweet
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年に一度。
想いを抱える女子も男子もそわそわしてる。
そんな様子を横目に見ながら、綺麗な紙袋を持って職員室へと歩く。
初めて作ったチョコを、大好きなあの人に渡したいから。
「(喜んでくれる かな)」
柄にもなくドキドキしながら職員室にたどり着く。
タイミング良く出てきたのは 目的の相手のゲンマさんだった。
視界に入った途端一気に緊張して一瞬足が止まる。
跳ねる心臓のまま声を掛けようとした、その時だった。
「不知火先生ーっ!!」
湧いた黄色い声に先を越され、ゲンマさんは女子に囲まれてしまう。
さらにその女子のひとりひとりが可愛くラッピングされたチョコを持っていた。
そうだ ゲンマさんは教員で一番人気がある(もっと言うならフェミニストでもある)。
あれだけ沢山のチョコを貰うのに、俺があげたって仕方ない だろう。
せっかく作った けど。
「(いらない か)」
浮き足立った気持ちも 大きくなった鼓動も緊張も、波に飲まれて深く沈む。
残ったのはやけに冷静な 全部諦めた自分だけ。
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