小説

□おかえりなさい。
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西へ月が傾いて 太陽が東から顔をだした頃、疲れた体を引きずって、家路を辿る。
家に帰るなんて何日ぶりだろう。
そして、何度目かわからない朝帰りだ。

別に仕事で遅くなってる訳じゃない。
仕事帰りにふらふらと遊び歩いて、酒に溺れているだけ。

別に帰りたくないわけじゃない。
家に帰れば、料理上手な恋人が夕飯作って待っててくれる。
男として 幸せなんだろうなぁって、思うけれど。



「(慣れないんだよなぁ)」



綺麗に掃除された部屋。
俺のために作られた食事。
俺を、待ってくれる人がいるという感覚。

ふわりと笑うアイツの顔が浮かぶ。
ああ、なんて愛おしい。
愛おしいと思うからこそ、こんな事だめなんだと思うんだ。
まだ若くて 将来性のあるアイツを、シカマルを、このまま潰していいはずがないんだ。

だから早く、俺に愛想を尽かして。



明かりの点いていない家へたどり着く。
鍵の掛かった扉を開け、暗い玄関に倒れ込んだ。



「(静かだな……さすがにもう、出て行っちまったか)」



安心したように、少しだけ残念そうにため息をついた。
これでいいんだ、きっと。
そう思って、自分を嘲笑うように口元を歪めた。
その時だった。



「あ、おかえりなさい」

「………お前、なんで」

「なんでって、当たり前だろ」


あまりにも当然のように言うもんだから、俺は衝動的にシカマルを抱きしめていた。
突然すぎて理解の追いついてないシカマルを、ひたすら強く抱きしめた。
そんな俺に、シカマルは何も言わず 抱きしめ返してくれた。



「……俺、お前のおかえりって言葉 好きだなぁ」

「じゃあちゃんと毎日帰って来いよ。……毎日 言ってやるから」

「……あぁ、そうするよ」

「おかえり、ゲンマさん」

「…ただいま」



ごめんな


こんな 馬鹿野郎だけど


毎日 ただいまって言うから


おかえりって 優しく笑って。









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家に帰って来て「ただいま」って言っても「おかえり」って返ってこないと寂しいです(知るか)

読んでいただきありがとうございました!
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