小説

□赤い海に沈む
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泣いていた気がしたんだ。



俺を狙ってきたらしいその男は、男と呼ぶには未熟な少年で。
ここに来るまでにたくさんの人間を殺してきただろう返り血でいっぱいで 残された幼さをかき消すほどだった。
そんな少年の瞳は闇よりも深く、これで俺よりも年下か と冷静な頭の隅でぼんやりと考えていた。



「………」



首元に突きつけられたナイフが怖くない訳じゃない。
けれどそれよりも ナイフを握る少年の瞳にばかり意識があった。

子供のくせに、こんなに荒んだ眼をしているなんて。
子供のくせに、人間を殺す事に何の抵抗もないなんて。
子供の くせに。



「粋がってんじゃねーぞ」



気づいたら声に出していた。
俺だって命狙われんのは一度や二度とじゃないから護身術は身につけてる。
ナイフを握った少年の手を捻り上げて、逆に床に押し倒した。



「てめぇみたいなガキがなんで俺を狙う?」

「…命令、だから」

「誰の」

「……」



少年は荒んだその眼で俺を睨みつける。
ように見えて、その瞳は俺を映さず いったい何を見ているのか。



「殺せよ」

「あぁ?」

「どうせ失敗したら処分されるんだ」



そうしたら、楽になれるんだろ。
そう言った少年はどこか安心したような口振りでそう言った。
そして俺に押し付けられているにも関わらず、何事もないかのように語ってくれた。

どうやら少年はある組織の殺人人形として育てられたらしい。
人間を殺すための知識に訓練を重ねて 生きる理由は殺しだけで、組織の人間からの命令に背けば殺されて。



「死にてぇのに 死ねなくて、殺したくねぇのに 殺すしかなくて……命令されなきゃ、どう生きていけばいいのかわかんねぇし」



伏せたまつげが酷く悲しげで、涙が零れたわけじゃないのに何故か泣いているように見えた。
俺は少年を解放し きょとんとするそいつに言い放つ。



「お前、名前は」

「……?」

「名前くらいあんだろーが」

「…シカマル」

「よしシカマル。お前 今から俺の下で働け」

「は?」

「命令してやるから 俺の隣にいろって事」



目を見開いて唖然とする少年 もといシカマルは、しばらくの間動かなかった。
しかし得意気に笑う俺を見て、シカマルはぎこちなく笑うんだ。



「(…殺人人形ってのに興味があっただけだが)」



コイツ自身がどんな表情をするのかってのも、興味が出てきたかもしれない。






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何がしたかったんだろう…。

命を狙われたのは名前も出なかったけどゲンマさんです 一応。
…ゲンマさんです(大事な事だから2回言いました)

読んでいただきありがとうございました!
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