‡Short Story(短編)

□束の間(切微甘)
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 すえたような嫌な匂いを鼻先に感じて目が覚めた。

 薄暗く、ハッキリ分からない。目を凝らすと汚い壁のような物が見えた。
 息も苦しい。
 捕らえれたのか?

 いつも通り部屋で仕事をしていたはずだ。

 誰かいないのか?
 誰か―――

 声の代わりに聞こえてきたのは―――ミャウ―――鳴き声だった。


 何か暖かい物にくるまれているように感じました。
 頭の上の方から声がします。

 「お前はラッキーだったわね。わたしはいつもはあの道は通らないのよ。いつもの道は昨日から工事中だったから」
 声の主は女性のようです。
 私は彼女に抱かれているようです。

 「今日から三日間お留守なんだけど、この三日お利口に出来たら、お前のこと、飼ってもいいか訊いてあげるからね」

 彼女は自分のことをメイドだと言い、主人は今留守だが、帰宅したら私を飼う相談をすると言いました。
 それから主人は外出嫌いの変人だと。さらに、意地悪だとも言ってましたが、果たしてそんな人がメイドのお願いなど聞き入れてくれるのでしょうか?

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