‡Short Story(短編)

□味見してもいいですか?(微甘)
1ページ/4ページ

 エリはパンケーキを作っていた。
 生地に生のブルーベリーを入れたもの。食べる時にはクリームチーズを添える。そして上からメイプルシロップをたっぷりかける。
 彼女は甘い物は苦手だったがこれだけはいくらでも食べられたし、弟の大好物だった。
 ブルーベリーが無いときはレーズンやクルミを入れ、チーズの代わりに砂糖を控えめにして泡立てた生クリームを添えても美味しい。
 ところでなぜこんな物を作っているかというと、自分が食べるのではなく竜崎の為に作っているのだった。

 先日、昼食としてこれを作って食べていたところ、キッチンに突然竜崎が現れた。
 
 「何を食べてるんですか?」
 「昼食です」
 「そうではなくてメニューを訊いてるんですが」
 「えぇっと……ブルーベリーパンケーキです」
 「美味しそうですね。味見していいですか?」
 「良いですけどコレは食べかけですよ」
 「大丈夫です」
 そう言うと彼は皿の上の食べかけ―――フォークに刺さった歯形のついたもの―――をパクリと食べた。
 「美味しいですね。でも私はもう少し甘い方が好みです」と言いながらそばにあったメイプルシロップに手を伸ばし、残り三分の一枚しかないパンケーキにそれをたっぷりとかけ、手でつまんでからアーンと大口を開けて一口で食べてしまった。
 呆気にとられていると、指についたシロップを舐めながら「お代わりはないんですか?」と聞いてきた。
 
 「生地が残っているので焼けばありますけど……」
 「じゃあ焼いて下さい。ここで大人しく待ってますから。あっ、ついでにお茶入れて下さい。食べたら喉が乾きましたよ」
 そう言うと彼女の向かいの席に陣取った。いつものスタイルで。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ