調書1
□ある日の朝(紫貴version)
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いつもと同じ時間に起きて、顔を洗って朝飯食って……。
俺の名前は、相原紫貴(あいはら しき)。仕事は、検事。身分証明書代わりの記章(バッジ)は、職場の鍵付きの引き出しの中にある。
スーツとネクタイを選ぶのは、昨夜のうちにやっておいた。学生時代のバイト先(ホスト)の所為(せい)でこれらは結構な数になった。が、バイトを辞めた時に派手なスーツは処分した。
(ん〜?)
何か知らないけど、嫌な予感がする。
それが何だかわからないまま、服を着る。
白いワイシャツ、ドクロの小紋のネクタイ、車のタイピン、濃紺のスーツ。
法廷のある日は、色無地か、無難な柄のネクタイをして行くのだが、今日は無い。
念のための予備のタイピンと色無地のネクタイをカバンに詰め込む。
「忘れ物、無し。行ってきまーす」
都内にひとり暮しの所為で、誰もいない部屋に自分の声が響く。
──この時はまだ、恋人が事件に巻き込まれるなんて予想もしなかった。
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