SHORT

□リクオの小さい野望
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「奴良!及川氷麗を掛けて勝負しろ!」
授業中にも関わらずドアを勢いよく開け大声を上げた主に周りがキョトンとした
「先輩、今授業中何ですけど」
いきなりなんだ?と思ったが良い奴のリクオは真面目な返答をした
「そんなのどうだって良い!!剣道で勝負だ!」
聞く耳を持たない男にクラスメイトの男が囁きあった
「あの人さっき及川さんに告って振られてたぜ?」
「マジかよ、確かあの人剣道部の部長だろ?三年の!」
「大人げねぇよな。一年にたいしてさぁしかも奴良だぜ?」

聞こえないと思い話しているがリクオには十分に聞こえていた
剣道部かぁと呟き
「良いですよ。氷麗に許可はとってあるんですか?」
「あぁ」
二文字で返されリクオは笑った
最近ストレスが溜まり良い発散にはなるかなーと賭け事とは違う考えだった
「放課後道場、で良いですか?」
「あぁ」
そう言うと男は満足げな表情をしながら教室から去った
リクオはそれを見送ると一息つく
それからは授業どろこではない
周りの男子が一気に集まった
「お前剣道とかできるのかよ!」
「うん。親戚がさ武道好きで小さい頃に剣道で遊んで貰ったことあるし、今本格的に始めたんだ。家に道場二つあるし」
嘘混じりに本当の事を言うと周りは驚いた
「道場が二つ!?」
「うん。一階と地下に道場あるんだ。今工事中だけどね」
「は?地下!?工事中ってぼろいのかな?」
「いや。ちょっと爺ちゃんと誰かが喧嘩して僕まで巻き込まれてさ。地下道場がボロボロに、ね」

アハハ〜と笑うリクオに周りは言葉を失った
「お前喧嘩できるのか?」
「まぁ、多少は。護身術程度は体力作りにやってたりするよ」
苦笑をしながまた嘘混じりに言う
「剣道と喧嘩関係ないか?」
「あーあんま変わんないよ。大胆竹刀とか木刀で喧嘩したことあるから」
本当は刀だがそれは言わない事にしよう

「・・・・・・そうなのか?」
「うん。まぁ気にしないでよ。主将だかなんだか知らないけど、氷麗を景品のように使うのは許せないし、勝っても氷麗と付き合えるとは言ってないしあの子ちゃんと言わないと勘違いするから。向こうが負けようが勝とうか関係ないし、ね?」

「「あー確かに」」
“勝っても付き合える”なんて言ってないし肯定も否定も氷麗に権利はある、とリクオの言葉に説得させられた

「でしょ?まぁ、負ける気なんて無いけど。・・・・・・で、氷麗はどうしてあんな話受けたのかな?」

ドアを呆れながら少し怒る口調で見ると申し訳なさそうにひょっこりと姿を表すとクラスがざわめく

「うっ、申し訳ありません・・・・・・。だって!あの人が喧嘩を売るからそれを買って・・・・・・!」

「氷麗、あーいうのはほっとくのが一番良いの!喧嘩を買おうとしない!・・・・・・たまに僕にそれが降り懸かるんだから」

「仕方ないじゃないですか!母から“売られた喧嘩は買えって”言われたんですから!」
「良いか悪いかくらいわかるだろ?」
母からどんなこと教わってんだ!?
クラスメイト全員の心の声が一致した

リクオはため息を一つついて言葉を繋げる


「とにかく。氷麗、君は僕にどうして欲しい?」
「勝って頂きたいです!」
即答で涙目で答える氷麗にクラス中が苦笑した
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