SHORT

□長編
1ページ/3ページ

設定
・鯉伴は生きている

・三つ子は世間一般で言うと美人の部類に入る

・三つ子の両親は鯉伴の親戚

・三つ子はリクオの家から隣町に有る高校まで通っている


これは千歳のサイトにある長編のサンプルなので三ページまでの更新です。続きは“梅雨の世界でお読み下さい”





T


ある日、鯉伴に有る一本の電話が掛かってきた。その電話を受けた鯉伴は、驚き、その場で金縛りにあったかの様に動けなかった…………

遡ること3時間前・・・双と凜は自分の子供を鯉伴に預けて、行けて無かった新婚旅行にと出掛けた。

三つ子達を授かって早16年、双は当時18、凜は16だった為二人は高校を中退し、親達の反対を押しきって結婚をした。
そして、新婚旅行を行く暇無く子育てをし、知り合いである鯉伴に子供を預けて海外に渡った。

「お母さん達今頃楽しんでるかなぁ〜」
千歳が縁側を見ながら隣に座っている千華と蒼月に聞いた。
「さぁ〜?まだ飛行機の中じゃない?」
「うん、多分飛行機の中でしょ。まぁ、楽しんで欲しいよ。結婚して16年間うちらを育てて、行けて無かったからね〜」
千華と蒼月は空を見ながら嬉しそうに微笑んだ。千歳はそうだよね、と返して空を見上げる。
幸せな時間が終わりを告げるなんて誰も予想はしていなかった……

そして、時は進み今に至る。

「蒼月!千歳!千華!大変だっ!」
何時もは見せない余裕がない鯉伴の表情に三人は首を傾げる。
「落ち着いて聞いてくれ…双達が飛行機事故に巻き込まれて死んだ……」
この言葉を信じなかった…いや、信じたく無かった。
「嫌だなぁ〜叔父さん!!冗談きついよ〜」
「そうだよ!!だってついさっき別れたばっかだよ?」
千華と千歳が苦笑しながら応えるが、鯉伴の表情は真剣だった。
嫌でも分かる、そこまで子供ではないから………でも…信じたく無かったのだ……いや、信じられなかった…………
肉親である親が亡くなったという真実を…………
「叔父さん、嘘……でしょ……………?」
「蒼月………本当だ。」
俺だって信じたくねぇよ……、と付け足すと蒼月の表情が悲しげに歪んだ。
「さっき別れたばっかりなのに!!もう…………一生…………会えないの…………?」
「うちらに、どうしろと言うのよ……」
「楽しんで…欲しかっただけなのに!!少しの間だけでも……楽になって……欲しかった…だけなのに…!!」
『永遠に楽にならないで!!うちらを置いて逝かないでよ!!』
三人は静かに泣き出した。
鯉伴達はただ……悲しみに浸っていた。
「……葬式、どうするんだ?」
鯉伴は泣き止んだ三人に聞くと、お互い顔を見合わせた。
「やんなくって大丈夫。でも……近所の人達には伝えるよ。良くしてくれたし。うちら、両親の家族から疎まれているし……親戚だって冷たい目で見てくるから、やっても無駄だし。遺産だって節約して使わなきゃ、駄目だし………」
三つ子を代表として蒼月が答えた
「……なぁお前ら行くツテあんのかい?」
鯉伴は三つ子の決断に口出しはしなかった………が、これからの生活を聞く。親戚も家族もいない三人に居場所はあるのか、と心配した。
「無いよ……施設でも行くか、家を売ってアパート借りるかでしか、生活できないもん…………」
「これ以上、他人に迷惑をかける訳には行かないし…………」
悲しげに言う千華と千歳に頷く蒼月。
「お前らはもうちょい他人を信じろ……。なぁ、お前らが嫌じゃ無かったら、奴良組に住まねぇかい?」
鯉伴は静かに三人に告げた。
『何で?迷惑じゃないの?』
三人は口を揃えて応えると鯉伴は目を細めた。
「んなわけないさ、ぬらりひょんは嘘はつかない」
『何それ』
クスッと笑う三人は、お互い顔を見合わせて微笑み鯉伴に告げた。
『お世話になります』

それから三人の保護者として鯉伴達は三人が生まれ育った町に行き、荷物を纏め家具や家は売り近所への挨拶を済ませ奴良組にと帰った。
鯉伴を含め奴良組は三人を手厚く迎えた。
“いらっしゃい”ではなく、“お帰り”と笑顔で迎えてくれた。優しさに触れ三人は笑顔で“只今!!”と言った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ