麦わら一味A

□乙女のピンチ
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昨日も雨
一昨日の雨

で 今日も雨

っていうか
ずっと雨









『てなわけで ありませんので』
目を閉じたまま 眉間に皺をよせ告げるむぎこに みんなから悲痛な叫び声がした

「ちょっと待ってよ!!確かに雨続きだったけど…嘘…」
ちょっと青ざめた顔のナミが言う

「困ったわね」
ロビンも困惑気味に言う

「ナミさん 次の島まではあと何日かかるんだ?」
「まだ海流が落ち着いてないところから考えて 大体5日はかかるかしら…」

サンジとナミが真面目な顔付きで話す中ルフィは一人笑っていた

「んなもん 裸で過ごせばいいじゃねぇか!」
ニシシっと笑って言うルフィ


「「「「『んなわけ いくかっ!!!』」」」」


有り得ない位の雨続きのせいで
洗濯物が乾かなくて
みんなの着替えが無くなった

この ちょっと情けない危機に みんな頭を抱えていた

あ ルフィ以外だ

『とりあえず…乾かない服を乾かす道具宜しく』
そう言って ウソップとフランキーの肩をポンと叩くむぎこ
「しっ仕方ねぇなぁ〜やるかっ!!」
「おぅっ!!」
どことなく顔を赤らめた二人が立ち上がる

「裸でいいじゃねぇか」
まだ一人ブツブツ言うルフィにサンジが腕を回し囁く

「やっぱ 乾かす努力をしよう!!」
途端にコロリと意見が変わるルフィ

両腕をグルングルンと力強く振り回しながら部屋を出て行った

「サンジさん…何を言ったんですか?」
ルフィが去った方向を ぼんやり眺めながらブルックが尋ねた
みんなも気になったようでサンジに注目する

「いやぁ…俺はただ むぎこちゃんの裸が みんなに見られちゃうんだぞ って言っただけだ」
まさか こんなに効果があるとなは そう言って苦笑するサンジ

むぎこ以外は納得の表情で頷く

「ルフィはむぎこが大好きだからナッ!」
チョッパーが椅子に座り足をパタパタ振りながら言うとむぎこは頬を赤く染めた

「チョッパー! ルフィも だ」
ゾロが静かに訂正すれば サンジも そうそう と同意した

『…あの 本人いるんですが』
申し訳なさそうにむぎこが言うが
抜け駆けはしないという謎の協定を組んでいる サンジ達は笑って誤魔化した



暫くして ウソップとフランキーが作った手動乾燥機らしきものが完成した

『えっと…大丈夫?これ…』
不安気に尋ねるむぎこ

良く見れば みんな 不安気だ

「おぅ!いいか このスイッチを押してだな …」
-カチッ!ピピッ!ボッ!!-

ウソップがスイッチを押すと 手動乾燥機の真ん中辺りに火がついた

「んで これを回す!」
火がついた後ろには扇風機みたいな羽があって 更にその後ろには手動式のハンドルがついていた

ウソップが ぐるぐるとハンドルを回すと羽が回りだし火が揺らぐ

「さっ!乾いてない服を前に!!」

『こっ…こう?』

言われて不安になりながらも おずおずと とりあえずゾロのTシャツを手に近付くむぎこ

「広げて!」
『はっ…はい』

バッ と広げて 手動乾燥機の前に立つむぎこ

ごうごう燃え上がる火が揺らいでいる

『あつっ…』
熱風を まともに受けるむぎこは辛そうだ

「貸せ!変わる」
ゾロが 引ったくるようにしてむぎこから自分のTシャツを取る

とんっと優しく背中を押して場所も代わり むぎこの代わりにゾロが自分のTシャツを広げて手動乾燥機の前に立った

『ありがとう…』
「あぁ」
短く ぶっきらぼうだが彼なりの優しさが伝わる

「あっつ!!…おい ウソップ これ…」

-ぼぅうっ!!-

揺らいでた火がTシャツに引火した
勢い良く燃え上がるTシャツ

辺りは大パニックだ
『いやぁ!!燃えてる!燃えてる!』
「見りゃ分かる!おいっ!麦わら!水だっ!!」
「いや 俺は肉がいいっ!!」

「言ってる場合かっ!!おい!マリモそのまま持ってろよ!」
「ばっ…出来るかよっ!!どぅわあっ!!あぢいっっ!!!!」

「あ!ちょっとっ…」

余りの熱さに ゾロが燃え盛るTシャツを放り投げた

弧を描いて 燃え盛るTシャツが飛んでゆく

着地した場所は…

『い゛や゛あ゛あ…』

「あら 洗濯物が燃えたわ」
ロビンが冷静に言う

「馬鹿野郎!よりによって なんで服の上に放り投げるんだっ!!」
フランキーが怒鳴る

「あぢぃんだから仕方ねぇだろっ!!!」
こちらも負けずと怒鳴り返すゾロ

「みんな…消火しないと…船も燃えるゾ」
真っ青になりながらチョッパーが言えば 再び みんなから悲鳴が上がる

『水ぅうぅ〜!!』

「好きだ!」
「どさくさに紛れて告白すんなっ!クソゴム!!」
「俺も好きだ!」
「マリモ!お前もかっ!!…いや待てよ…俺も言っておくか むぎこちゅわぁああん 好きだぁあ!!」

「うるさいっ!!!」

-げいんっ!-
「ナミさん…なんで俺だけ…」
「うるさいわねっ!とにかく火 消してぇっ!!」
「ギャアー!船も服も燃えてるぅう‐!!」
「コーラだ!こういう時こそコーラだ!しゅわしゅわ〜っとな!!」

『意味分かんないから!』

「いぇ‐い!キャンプファイア‐だぁあ!!」
「「「「違うわ!!!ボケェッ!!!」」」」


ギャアギャア騒ぎながらも
なんとか消火する一同

後に残ったのは
燃えて灰になった服と焼け焦げたウソップ工場…

『どうしよう…』
焼け石に水

そんな言葉が
頭を支配する


みんな騒ぎ疲れたのか
打つ手無しと考えたのか


寧ろ 動かない方が被害最小だったのかも…と考えたのか

みんな ただ ただ
呆然としていた


外は 雨


『雨…ウソップのバカ』

「俺かよっ!!」


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