短編小説

□*我ら美男美女パーティ*
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「──なぁ、俺達の中で一番見た目がイケてねーのって誰だ?」

「は?」

旅の途中、静かな夜をケセドニアの宿屋で過ごしていた一行は、ルークの突然の問いかけに首を傾いだ。

「いや、だから、この中で一番イケてねーのって誰かなって」

「それってつまり、ブサイクな奴は──ってこと?」

アニスは腰に手を当てる。

「あ、うん……まあ……」

「なんだ? 藪からスティッ──いや棒に」

ジェイドとチェスをしていたガイは、ふと手を止めて顔を上げた。

ガイ様、今なんか危なかったよ。

「ん……なんか、アニスがよく俺のこと鈍感ヘタレだとかお子ちゃまだとか言うから、見た目もやっぱ劣ってるのかなって……」

「──まあ! あなたはとても素敵ですわよ! 外見は!」

「ナタリア、いま絶対アッシュのこと考えたでしょ」

唐突に声を上げたナタリアに、アニスは痛い視線を向ける。

「い、いえ、そんなことはありませんわ; 確かにアッシュは、美形で瞳が美しくて目鼻立ちがスッキリとしていて二の腕がたくましくて太刀筋が綺麗で──」

いや言わなくていいから。

「……まあ、アッシュは抜きにしても、確かに外見はそれほど……いやでもその髪型と服はマイナスポイントだよね」

王女を無視し、アニスは勝手に評価付ける。

「こ、この髪型はティアに整えてもらったんだぞ!」

「それって、私が悪いって言いたいの?」

壁に立てかけられた絵を見ていたティアは、ルークの言葉にくるりと振り返ると、微かに眉をつり上げた。

「あっいやっ、そういうわけじゃなくて……;;」

「指示を出したのはあなただったわよね」

「だからそういうわけじゃなくて!!;;」

「じゃあどういうわけ? どうせ、私の腕が悪いとか言いたいんでしょ」

「ち、ちげーって!! 勘違いすんな!!;」

ルークはドカリと椅子から立ち上がる。

「まあまあまあ、そんな細かいことはどーでもいいから。ただアニスちゃんは、そんなヒヨコみたいな髪型だと、子供っぽく見えるよって言いたかっただけ〜」

「なっ……! 正真正銘子供のお前には言われなくねーなっ」

「アニスちゃんのどこが子供だって言うのよ! こんなに大人の色気ムンムンなのに!」

アニスは拙いながらもセクシーポーズを決めてみせる。

「ふんっ、背も胸もちっせーだろ」

「んだとゴラァ!!」

瞬時にトクナガを巨大化させ、ルークの頭部めがけて腕を大振り。

「ぅあっぶねっ!!」

「どぉ〜せ男はみんな胸胸胸!! 胸が大きければなんでもいいんでしょ!!」

「んなこと言ってねぇだろ!!」

「言ったも同然っ!! ヘタレのくせにティアの胸ばっか見てんじゃねぇぞこのヤロ!!」

「はっ//!? ティ、ティアのむむむ胸なんかみみ見てねぇよ//!!」

うわ、無茶苦茶動揺してるよ。

ティア、顔真っ赤になってるし。

「嘘つき!! 一番ブサイクなやつは誰だとか言って、ホントは、一番美人なやつはティアだよなとか言おうと思ってたんだろがヘタレ!! やることが大佐より汚いんだよヘタレ!! このヘタレのヘタレ!!」

アニス、黒笑ジェイドにロックオンされてるぞ。

「へ、ヘタレヘタレうるせぇよ!! 俺は別にそんなこと考えてねっつーの//!!」

「じゃあ、ルークはティアのこと美人じゃないって思ってるわけぇ? サイテー!! この節穴!!」

「なんでそうなるんだよ!! ティアはお前なんかより数段綺麗だっつーの!! ……──あ」

うわ、アニスが無茶苦茶にんまりしてる……。

「へぇ〜、さりげなく言うようになったじゃん、お坊ちゃま」

「い、今のは違っ……//!!」

ダメだルーク、今ここで自分の発言を否定すれば、またサイテーとか言われるぞ。

「えぇ、違うのぉ〜?」

「ルーク、正直に言っちまえよ」

ガイ様はいつでも女性の味方。

「えっ、だ、だからっ……」

ちなみに大佐は、ガイがクソ弱かったため飽きて読書中。

「そ、そのっ……!!」

姫様は一人優雅にティータイム。



「──っだあぁぁぁぁ!! き、綺麗なもん綺麗つって悪いかぁぁああああああぁあああぁああぁあ//!!!!」

ルーク爆発。

「──////!!」

ティア真っ赤。

「おぉっ、ルークいつにも増して大胆! 良かったね、ティア♪」

「えっ……わ、私は……//」

ティア、思わずルークを見るが目が合った瞬間逸らし必死に首を横に振る。

「た、ただの冗談でしょ! 私なんかより、ナタリアの方が気品もあるし綺麗だわ!」

「え、わたくし……?」

紅茶を飲みながらアッシュのM型オデコを思い返していたナタリアは、フイと顔を上げる。

「ん〜確かに、王女であるナタリアはオーラの時点できらびやかだし肌綺麗だし瞳も大きくて可愛いし〜」

「大佐の肌も男性かつ軍人にしてはとても白くて綺麗ですわよ」

ナタリアがジェイドに視線を走らせると、当の男は指で眼鏡を押さえてゆっくりと顔を上げ、

「身だしなみですから♪」

と、気味が悪いほど微笑んだ。

他のメンバーはゾクゾクと寒気を感じながらも会話を続ける。

続けるのだ!

「ま、まぁ、大佐は確かに美形だよねぇ〜♪;」

「眼鏡を外したお顔を拝見したいですわ」

「ハッハッハ、眼鏡を外して譜眼が暴走し、この街一つが消滅してもよろしいのであれば外しますが」

「「え」」

そうだ、大佐の眼鏡は譜眼の制御をする為のものだった!

「──俺は悪くねぇ!!!!」

「えっ、何!?」

しまった、ルークの発作が出てしまった。

“街・消滅”のワードに反応しやがったな。

「俺は悪くねぇ!! 俺は悪くぬぇぇぇぇ!!!!」

「うるさいっ!!」

アニスはルークの口にニンジンを差し込む。

「ふごっ!? ……に、にんひんっ……にんひんはひやい……まふいにんひんあわふい……ひあにんひんはわふふないっ…………ガクッ」

絶命。

「…………」

「──で、結果的に誰が一番ブサイクなのかな?♪ アニスちゃん、とか言わないよねぇ?」

アニスは無邪気に首を傾げる。

「勿論ですわ。アニスも大佐もティアもルークもわたくしも当てはまらないのでしたら、これ以上は決めようがありま──」



「──君達、俺を忘れちゃあいないか?」


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