短編小説

□*我ら美男美女パーティ*
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「だ、誰っ!?」

アニスが声の方を振り返ると、壁に背を当てた青年が爽やかな笑みを浮かべていた。

「なんだガイか」

「なんだとはなんだ! 俺の存在忘れてただろ!」

「うん」

「うんじゃない!」

っていうか、いつの間に壁際に移動したんだ。

「ガイって、何気に影薄いよね」

「さっきから会話には参加してただろ!」

「そうだっけ?」

「わかりませんわ」

「orz」

あ、泣いてる。

「……まあそんなことはどうでもいいけど、ガイも別にブサイクじゃないよね。女性恐怖症を除けば」

「そうですわね。女性恐怖症を除けば」

「orz」

台詞じゃないのに「」を使うな。

「フツーにカッコいいよねぇ〜」

「そうですわね」

「そうでもないだろ」

ヲィ、自分で否定するなよ。

「はっ、自分がどれだけモテてるかわかってるくせに」

「よく女性に囲まれているではありませんか」

「いや、あれはジェイドに用がある女性陣さ」

「え、そうなの?」

「ああ、俺はそう思うようにしている」

「って違うんじゃん! 恐怖のあまり自分の都合の悪いことから逃げようとしてるだけじゃん!」

「怖いんだから仕方ないだろ!」

プッ。

「ガキかっ!」

ホントにガキみたいだ。

「……ま、っていうのは冗談だけどな」

「殴ってもいい?」

「やめてくれ;;」

ガイは苦笑すると、スイッチを入れ替えたように真面目な顔になる。

「まあ、どのみち、このメンバーだったら俺が一番下だろ」

「えぇ〜。なんか納得いかな〜い」

「なら、アニス的には誰だと思うんだ?」

「ここで嘘寝してるやつ」

アニスは机にひれ伏している赤毛を指した。

「……バレてたのか……」

ルークはむくりと起き上がる。

「さっきガイが、“怖いんだから仕方ないだろ!”って言った時、笑ったでしょ」

「ガイが情けないこと言うからバレただろ!」

「俺のせいかよ!」

狸寝入りとは、ルー君も子供だな。

「つーか、なんで俺なんだよ!」

「やっぱりアニスちゃん達がイケ過ぎてるから、必然的にルークが一番下になるんだよね」

「アッシュは最も素敵ですわ!」

「アッシュは除外だって!」

「アニスの方が子供っぽくてイケてねぇだろ!」

「喧嘩売ってんのかコノヤロ!!」

「喧嘩売るほど強くねぇ!」

「アッシュは一番ですがルークは違いますわよ!」

「なんでだよ! レプリカだから顔一緒だろ!」

「ルークの弱虫毛虫!」

「うるさいほっとけ!」

「髪型と目付きが全然違いますわ!」

「どちらかっていうとアイツの方が目付き悪いだろ!」

「うわっ、ルーク最低!!」

「最低ですわ!!」

「イジメかよ!!」





「……なぁ、ティア。君的には誰が一番イケてないと思う? やっぱり俺だよな」

「あなた、何を目指しているの?」

「ハハハ、俺にもわからないよ」

ガイ様、最近いろいろとお悩み気味。

「そう……。でも、冷静に考えて言うなら、やっぱり私でしょ」

「いや、それはないよ。君はとても綺麗さ」

「そ、そんな冗談面白くないわっ; 絶対に私よ!」

「いや俺だ!」

「私よ!」

「俺だ!」

「私よ!」

「俺だ!」

「私よ!」

「俺だ!」

「私よ!」
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「──皆さん、少し落ち着いてください。そんなに大きな声を出したら、他のお客さんに迷惑ですよ」

「「「「「……あ」」」」」

そうだ、今は既に深夜近くで、ここはケセドニアの宿屋だったんだ。

当然、自分達以外にも人はいる。

「だいたい、好みや価値観は人それぞれでしょう。私達全員が同じ思考回路を持っているわけではありません。ですから、誰が一番上など下などということを話し合いで決めるのはどうかと思いますよ」

「「「「「…………」」」」」

ごもっともです、大佐様。

「オリジナルとレプリカであるアッシュとルークにも、考え方に違いはあるのですから」

「「「「「…………」」」」」

仰る通りです、大佐様。

「私、なにか間違っていますか?」

「「「「「いえっ」」」」」

ルーク達は、ジェイドから滲み出ている黒いオーラにビクビクしながら互いに視線を走らせる。

「そ、そうだよな、好みは人それぞれなんだよな」
(性格が一番アレなのは旦那だよな)

「そうですわね。世界中の皆さんがアッシュのことを一番大切だとお思いでしたら、わたくしなんだか胸の内がモヤモヤしますわ」
(性格のみを考えたならば……そうですわね)

「私達は個性があるからこそ、お互いを憎むことも愛することもできる」
(せ、性格も個性の一つよ)

「たとえどんな嫌われ者でも、好きになってくれる人はいるんだよね。つまりディストとかディストとかディストとかにも」
(人間見た目より中身でしょ。大佐は一番大事なものが欠けてるよ。アニスちゃんはお金持ちだったら別に誰でもいいけど♪)

「ディストが好きなやつはよっぽどの変わり者なんだろうけど…………それも悪いことじゃないんだよな」
(やっぱ性格ブサイクNo.1はジェイドだな)

「いえいえ、アレを好き好む人間などこの世にいないでしょう」
(皆さん、私の顔に何か付いていますか?)

「「「「「…………;」」」」」
(いえ、なにもっ!!)

このオヤジ、ディストが絡むと矛盾だらけだな。

「──ん、ま、まあ、とりあえず、アニスちゃん達はみんな美人だってことで!」

「そ、そうだな! スゲーな俺達!」

「さすがわたくしとそのお供ですわ!」

「俺は一番下が良かったんだけどな〜」

「だからどうして?」

「ハッハッハ♪」

なんかちょっとズレてる人が数人いるが、それはそれでまたよし。



「アニスちゃん達美人揃い最高最強♪ ──そう! 我ら!!」


「「美男美女パーティ!!!!」」




「──うるせぇ!!!! ナタリア以外がこんな夜中に大声出してんじゃねぇよ!! 屑がぁぁぁぁぁっ!!!!」


あ、なんかドカリと入ってきた。

この宿屋に泊まってたんだアッシュ。



「眠れねぇだろうが!!!! 屑がぁぁぁぁぁぁあ!!!!」



あなたの方がよっぽどうるさいけどね。














はい、fin......
 
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