☆拍手話し☆

□『抱擁』
1ページ/1ページ





「………」

新しい本部となる建物で師であるクロスと謁見したアレンは自分が『14番目』の宿主であると聞かされた。

本業である歴史の記録をする為、部屋の隅でそれをラビも聞いていた。

ラビはクロスの言葉に絶句していた。
驚愕もし言葉を失った。

今、クロスは何と言った?

アレンが『14番目』の宿主?

いつかアレンを取り込み覚醒すると言うのか?

そして…覚醒したら大切なものを殺さなきゃならなく?

一体、どう言う事なのかラビには理解出来なかった。

いや、理解しろと言う方が無理だろう。

ラビは呆然としながらもクロスの言葉、一つ一つを記録し続けていた。

一番、驚いているのはアレン本人だろう。

いきなりそんな事を言われても理解出来ないだろうし何より自分の大切なものをその手で殺めなければならないなんて……。

「……」

白い煙草の煙を吐きながら喋り続けるクロスからアレンに目線を向けるとアレンは俯き耳から掛かる白銀の髪が垂れその顔はよく見えなかった。

「………」

―アレン…―











「…ジジィ」

「なんじゃ?」

ルベリエやコムイ達が旧本部へ戻ったのを見送った後、ラビは口を開いた。

「…俺、今日はここに泊まるさ」

「…部屋にはまだ何も用意されておらんぞ?」

「ヘーキさ。適当なトコで休めればいいし。
さっきリナリーとジョニーが待ってた部屋にソファーがあったからそこで寝るさ」

「……そんなにあの小僧が心配か?」

「!」

吸っていた煙草の煙を吐きながらブックマンは尋ね

「…以前から気になってはおったが…お前はあの小僧に入れ込み過ぎておる」

「………」

「前にも言ったが我々は歴史の全てを記録する者じゃ。
あくまで傍観者…たまたまこちら(教団)側に着いただけの話し」

「…分かってるさ…」

顔を逸らしポツリと答えるとブックマンは歩き始めラビの横を通り過ぎ

「いずれにせよ我々の目的だけは忘れるでないぞラビ」

釘を刺す様に言えばそのままブックマンは部屋を出て行き一人残されたラビは俯きギュッと手を握り締めた。

「………っ」

―分かってる…分かってるさ…そんなの…俺だって…―







頭ではちゃんと分かってるけど……







ココロが追い付かないんさ…





ソレに抗おうと必死になるんさ…


「…………」

クロスとの対談後、アレンは最初に招かれた部屋へと再び戻された。

その部屋の前に来たラビは扉を見つめゆっくり肺の底から息を吐き出した。

―クソ…ジジィがあんな事、言うから妙に嫌な気分さ…―

胸糞の悪さを感じながらもドアノブに手を掛けると妙に重く感じる扉を開け中を覗き込んだ。

「………」

中では未だ拘束着を着せられ床に座り込むアレンの背中が見えた。

「…どうしましたリン…」

ゆっくり首だけを振り向いたアレンはラビを見て大きく目を見開いた。

「…ラビ…」

「……よっ」

苦笑しながらラビはアレンの元へ歩み寄ると隣に座り込み

「…どうして…」

「うん?」

「…どうしてココに…?てっきりもう旧本部に帰ったのかと思ってました」

「今夜はアレンと一緒にここで夜を明かそうと思ってな」

「!」

「俺達が新本部で一番のりさ?何も無いけど」

「君って人は…」

ニカッと笑うラビにアレンも微かに笑うと再び俯き自分の手を見つめた。

「…そういやさ、あのホクロ二つは?」

「えっ?」

「さっき入った時にアレン、ホクロ二つの事を呼び掛けたさ?」

「あー…さっきまでリンクがここに居たんです」

「なんだ。アレンがゲート開きに行くって言った時には居なかったからラッキーって思ったのに」

「ラッキーですよ?さっき来たのはルベリエ長官と何か話し合いがあるらしくて今夜は監視が出来ないって言う連絡だったんです」

「お〜♪」

「だから代わりに憲兵の人が僕の部屋の前で監視するから早く旧本部に戻る様にって」

「お〜…;」

何処までも手の込んだ事をする奴だとラビはうな垂れアレンは苦笑し

「だから僕は旧本部に戻らなきゃ」

「………」

立ち上がろうとするアレンにラビは腕を伸ばすとその左腕を掴みそのまま自分の方へ引き寄せた。

「わっ!!;」

急に引っ張られバランスを崩したアレンはラビの胸に飛び込む形になり驚き

「ち、ちょっとラビ?!;」

「…行くなよ…」

「!!」

ラビはギュッとアレンを抱き締め

「…行くなさ…何処にも…」

「…なに…言ってるんですかラビ…」

アレンはラビの黒いコートを握り締め

「僕は今…教団から監視を受けているんですよ…?早く帰らなきゃ……」

「俺の側に居てさ」

「………」

「今だけは…俺の側に居てさ…お前に触れさせてさ…」

「…ラビ…」

そっとラビの頬に触れ様とした瞬間、アレンはふとクロスの言葉を思い出し手を止めた。




『大事な人間を殺さなきゃならなくなる』



「アレン?」

「……して…どうして…」

「………?」

「どうして…師匠はあんな事を言ったんだ…?」

「アレン?」

「僕は…僕は…っ」

アレンの声は徐々に震え小さなその肩も震えだすとラビはハッと気付き抱き締める腕に力を込めた。

「ラビ…僕は…君を…みんなを殺してしまうの…?殺さなきゃならなくなるの?」

俯きながら問い掛けるアレンの瞳からは大粒の雫が零れ落ちラビは悲痛な表情をした。

「…アレン…」

「僕は…『14番目』なんかじゃない…っ
君を…みんなを…殺したりなんかしない…絶対…っ」

「…あぁ…分かってる…分かってるさアレン…」

宥める様に優しく背中を擦ってやりながらラビは答え白銀の髪に鼻を埋め

「…お前はアレンさ…『14番目』なんかじゃない」

「………っ」

「お前は俺やみんなを手に掛けたりなんてしない…大丈夫さ」

「…ラビ…ッ」

ゆっくり顔を上げれば頬を伝い涙が零れラビは顔を寄せ舌を伸ばすと涙を舐め取りそのまま軽くキスを施した。

「…守って見せるさ…お前は…俺が絶対に…。誰も殺させたりしない」

「…ぅ…くぅ…っ」

「だから…アレン。俺を信じるさ…俺もお前を信じてるから」

「……っ」

止まらない涙を零し続けながらもアレンはコクコクと頷きラビは目を細めるとアレンを絨毯へ組み敷き顔中にキスの雨を降らせた。


―ジジィ…やっぱ無理さ…―

「ん…ラビ…っ」

―こんなに小さな体で一人で全てを背負って苦しんでるアレンをただ観てるだけなんて…―

「…アレン…」

―俺には…出来ないさ…―

服の留め具を外しに掛かれば背中に腕を回され引き寄せられラビは応える様にその小さな愛しい恋人(アレン)を抱き締め返した。




















END…







〜何やらシリアスなラビアレになってしまいました(笑)〜 
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ