☆拍手話し☆
□『進展』
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「おい、モヤシ」
「ふぁい?」
団員で賑わう食堂で食事をしていると声を掛けられパンケーキを咥えたままアレンは首だけを振り返った。
そこには普段着の白いシャツにスラリと長い黒いズボンを履き頭のてっぺんで長い黒髪を一つに結い上げた神田の姿があった。
「…何です?」
頬張っていたパンケーキを飲み込むとアレンは神田を見上げ
「お前、今日は非番か?」
「はい、そうですけど…?」
「………」
何だ?と首を傾げるアレンに神田は耳に唇を寄せ
「…なら今夜、俺の部屋に来い」
「!」
いいな?と言うとアレンはコクンと頷き神田はアレンの口元に付いたパンケーキの欠片を親指で拭い取ってやりその指を舐めながら離れそのまま食堂を後にした。
「…部屋に来いって…」
「誘ってるんかねぇ」
「うおわ!!?;」
急に背後から声がし振り向くとテーブルに肘を着き顔を支えながら自分を見つめるラビの姿があった。
「ラ、ラビ?!;いつからそこに?!;」
「ユウの『なら今夜、俺の部屋に来い』ってトコから?」
「…気配、消さないで下さいよ…;」
ビックリするじゃないですかとアレンは向き直り再び食事を始め
「なぁなぁ、さっきのユウからのお誘いだろ?やっぱ行くんさ?」
「お誘い?なんのです?」
「……え?;」
首を傾げるアレンにラビは目を点にし
「…や、夜にお誘いつったらアレしか無いっしょ?;」
「アレ?」
「…うっそ…アレン、まさか…分からないんさ?!;」
驚きながら問い掛けるラビにアレンはますます首を傾げ
「だから、アレって何です?」
「何って…ナニっしょ?;」
「は?」
余計に分からなくなったのかアレンは眉間に皺を寄せ食べていた手を止めた。
「意味が分かりませんが僕はてっきり説教でもされるのかと思っていたんですけど?」
「は?説教?;」
「だってわざわざ部屋に呼び出す位でしょう?何か神田の神経を逆撫でする様な事をまたしてしまったのかなぁと…」
「…んな…サザ●さん家の波平じゃないんだからさ…;」
「ナミヘイさん?」
「あ〜いや、コッチの話しさ;とにかく、あんな仕草までしてんだから分かるさ普通?!」
「…仕草?」
「ユウがアレンのほっぺたに付いてたパンケーキのカス、取ってそれを舐めてたじゃん。何が目的かと言わんばかりに」
「………」
アレンは口に手を当て暫し考え
「…何か意味あったんですか…?アレって」
「駄目だこりゃ;」
アレンの答えにラビはガックリとうな垂れ
―アレンってここまで鈍かったんか?;
って言うかもう年頃なんだからあんな表情したユウを見たら分かるだろ?!;―
「あのラビ…?;大丈夫ですか?;」
「あー…うん;俺はヘーキだけどユウは大丈夫じゃないかもな…;」
「なんでそこで神田の名前が出て来るのかが分かりませんが…;」
「なぁアレン。ユウと付き合い始めてもうどの位、経ったさ?」
「えっ?えっと…半年…位…?」
「…その間にユウには何もされてないんさ?」
「何って?」
「あ゙ーだからさ…その…恋人らしい事?;」
「それならありますよ?」
「おぉ!例えば?!」
思わず立ち上がり問い詰めるラビにアレンはニッコリ笑い
「手を繋いでくれたりとかギュッてしてくれたりとか」
「………;」
―あいった〜!まだAの段階かよ!!;お前らは思春期の中学生か?!;―
再びガックリうな垂れ内心、叫ぶラビにアレンは心配そうに見つめ
「本当に大丈夫ですかラビ?;どこか悪いんですか?」
「あー…うん…オニーサン頭が痛くなりそうさ…;」
「大丈夫ですか?!;僕、医療班の所に行って薬貰って来ますよ!!」
「わー!違う違う!!;大丈夫、大丈夫だからとりあえず座ってさ!!!;」
立ち上がり駆け出そうとするアレンにラビは慌てて腕を掴み止めに入った。
「はぁ…」
一体、何なんだと不思議に思いつつ再び椅子に座るとアレンはラビを見つめ
「…え…えーっと…込み入った事を聞くけど…アレンとユウは…まだ…チュウはして無いんさ?;」
「!!///」
ラビの質問にアレンの顔は見る見る赤くなり
―あ。この分だとまだ……―
「あ、ありますよ…?///」
「…………マジで?!;いつ?何処で?!;」
「ちょっ、なに興奮してるんですかラビ!;落ち着いて!!///;」
「あ…あぁ…悪かったさ…;」
我に返ったラビは平常心と内心で何度も呟き
「…で?;」
「…神田に…好きだって告白した時です…///」
「…何処に?」
「何処にって…く…唇に決まってるじゃないですか…///」
カァッと更に真っ赤になり俯くアレンの姿にラビは顔を逸らし何故か聞いた自分まで恥ずかしくなるのを感じた。
―グッジョブ!グッジョブさユウ!!;
なんか聞いてる俺まで恥ずかしくなって来たさ!!!///;―
「えっと…そ、その後は…?///;」
「えっ?///」
「ほ、ほら体を触られたとか押し倒されたとかさ…///;」
「…ギュッとなら抱き締められましたけど…///」
―ユーくん理性強過ぎ!!ある意味、男さぁぁぁ!!!;―
「ラビ?;なんで泣いてるんです?;」
「いやぁ…ユウの男気が余りに凄くてさ…;」
「は?;」
「じゃあその後の進展は無い訳か?」
「進展と言うか…最近、ちょっと変わって来たかなぁって言うのならありますけど…」
「何さ何さ?!」
「………///」
アレンは目を逸らし口に手を当て
「…キ…キスをしてる時に…その…し…舌を絡めて来るんです…////」
「…………」
―ちょっとした進展あったァァァァ!!!!―
「ふ…ふーん…///;」
平常心を装いながら相づちをうちつつもラビは内心、叫び頷いていた。
「…で、何か意味があるんですか?この質問は///」
「いや、うん…何でも無いさ」
「は?!;」
―ユウはユウなりにアレンを自分色に染めようとしてるんさねきっと…。
まだ何色にも染まっていない無垢で純白な真っ白いアレンを…―
余計な事は言わない方がいい。
言えば逆に野暮な事だと感じたラビは苦笑し椅子から立ち上がった。
「ラビ?」
「今夜、ユウのトコに行けばきっと分かるさ。ユウがアレンに何をしたいのか」
「?はぁ…」
首を傾げ続け見上げて来るアレンにラビは小さく笑うと手を伸ばしクシャリと髪を撫でてやり
「ま、頑張って来いさアレン」
「はい、気合い入れて叱られて来ます…;」
「プッ…」
クスクスと笑い撫で続けるラビにアレンは頬を膨らませ
「人の不幸を笑うと自分に返って来ますよラビ?」
「いやいや、ゴメンゴメン。俺が言った頑張れは違う意味だったんさ」
「違う意味…?」
「まぁそれもユウのトコに行けば分かるさ。んじゃ、またな」
「はぁ…」
ポンポンと肩を叩き食堂を出て行くラビを見送りアレンは持っていたパンケーキを口に運んだ。
「………」
―結局、何が言いたかったんだろラビ…―
時々、おかしな事を言うなぁと思いつつアレンは残りのパンケーキを完食するのだった。
その夜に何が起こるのかはまだ知らない…。
終わり
〜ニブチンなアレンくんでした(笑)
その後の話しは裏話しなんで本棚で書こう(笑)〜