☆拍手話し☆

□『初雪』
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『見て!雪だよ!!』

小さな子供は空から舞い振る白い雪に腕を広げはしゃぎ回り石畳の階段に腰掛けそんな少年の姿を見つめていた黒いシルクハットとコートを着た男はニッコリ微笑んだ。

『凄い〜!沢山、降って来た!!きっと明日には積もってるよ!ね、マナ!!』

クルッと少年が振り向くと座っていた筈の男の姿は何処にも無く少年は辺りを見回した。

『…マナ…?』

何処を見ても辺りは雪一面に覆われ真っ白に染まり少年は一人、立ち尽くした。

『……マナ……』





何処に行っちゃったの…?




ねぇ…マナ…






『マナ……』







一人にしないで……











「…はぁ…」

降り積もる雪に混じり吐いた息が白くうっすらと煙の様に漂い消えた。

「………」

黒いコートのフードを深く頭まで被るとポケットに両手を突っ込み寒さで微かに赤くなった鼻を啜りながらアレンは空を見上げていた。

「…寒…っ」



こんな冷える日はあの夢を思い出してしまう…



「アレン見っけ!!」

「!うわぁ!!;」

急に背後から抱き付かれ驚くとバランスを崩し雪に倒れ込んでしまった。

「ブッ!ちょっ、ちょっと…ラビ!!;」

「あはは、ごめんごめん。大丈夫さ?」

雪から顔を上げ首だけを振り向くと笑いながら自分を見下ろすラビの姿がそこにはあった。

「いきなり背後から抱き付くなって言ってるじゃないですか;」

「いやぁ〜なんかアレンの背中から哀愁漂ってたからつい」

「哀愁って…;」

はぁと息を吐くとラビはアレンの上から退き雪に座り込みアレンの腕を掴み身を起こさせた。

「どうしたんさ?」

「えっ?」

「アレン、ずっと雪を見つめて泣きそうな顔してたさ」

フードが取れ白銀の髪に着いた雪を払ってやるとアレンはキョトンとし

「……泣きそうでした?」

「うん、今にも泣きそうな顔して雪を見上げてた」

「………」

アレンは少し俯くと苦笑し雪を見つめ

「…雪が降ると時々、夢を見るんです」

「夢?」

「…幼い頃の僕が初雪にはしゃいでそれをマナ…養父が微笑みながら見守っててくれてるんです。
けど僕が振り向くとそこに父の姿は無くて…何処を探してもいなくて」

「………」

「一人残された僕はずっと雪の中で佇んでいる。そんな夢を見ていた事を思い出すんです」




何処まで行っても見つからない愛おしい人。



ただただ広がる白い雪景色。



そんな世界に一人、取り残されてしまった自分。




「…変ですよね。こんな寒い中でボーッとしながらそんな事を思い出すなんて」

「……アレン」

「!」

釦を外したラビはコートを広げるとすっぽりとアレンを包み込み抱き寄せ

「昔に何があったのかはどうあれ今は一人じゃないさ?」

「!!」

「リナリーやユウやクロちゃんにコムイやリーバー…そして、俺が居る」

「ラビ…」

「アレンの側にはもう沢山の仲間がこんなにも居るんさ。もうお前は一人じゃない」

「………」

ポスと胸に頭を預けるとアレンは目を細めラビの腕に手を添え

「…うん…そうだね…」

「………」






遠くからアレンを見ていた時、一瞬アレンが消えてしまいそうな気がした。




この雪の様に溶けて




この雪の様に真っ白になって






そのまま消えてしまう気がして




それが恐くて気が付いたら駆け出してアレンに抱き付いてた。






「ラビ?」

黙り込んでしまったラビに首を傾げ見上げるとハッと我に返りラビはニッコリと笑い

「アレンは雪が嫌いさ?」

「えっ?いえ、嫌いでは無いですけど……」

急な質問に曖昧に答えるとラビはアレンの髪に触れそのまま軽くキスを施し

「俺は…好きさ」

「!!///」

「銀みたいに綺麗で何色にも染まらないこの真っ白な色…。
冬にしか見れない貴重な物さ?」

「…そ…そうですね…///」

カァッと赤くなり俯けばラビは目を細めアレンを強く抱き締め

「でもアレンの事はもっと大好きさ」

「………っ///」

「雪=アレンって法則が出来そうな位さ」

「…歯が浮きそうなんでそれ位にして下さい…///;」

「え〜?もっと言わせてさ?俺、こう見えて結構ロマンチストさ?」

「プッ…そうだったんですか?」

見えないなぁと言い足しながら笑うとラビはアレンの頬を包み込み顔を近付け

「そうなんですよ?なんならもっと囁いてやるさ?」

「恥ずかしいんで止めて下さい///」

「じゃ、この口を塞いで?喋らない様に…」

「…それが目的なんでしょう?」

クスクス笑うとアレンもラビの頬を両手で包み込み顔を寄せゆっくり唇を重ねた。





降り注ぐ雪は冷たい筈なのに何故か温かい気がして…




これもラビのおかげなのかな?とアレンは内心、呟いた。











ねぇマナ…




僕は過ちを犯し貴方と言う大切な人を失ってしまったけど…






また、大切な人を見付ける事が出来たよ。






「…アレン…来年の初雪は二人で一緒に見よう?」






失ってからずっと一人で初雪を迎えていたけれど…





「はい、そうですね…///」






今はもう、一人じゃない。












〜この寒い中、熱々カップルをかますお二人です。ご馳走様でした(笑)〜

 

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