†本棚†

□comes back early
1ページ/10ページ


「…はぁ…はぁ…っ」

薄暗い部屋の中、アレンはベッドの上で寝そべり丸くなっていた。

「は…はっ…ぅ…」

苦しげに荒い息を必死に整えながら灰色の瞳に涙を溜めアレンは腕の中に抱き締めていた白いシャツに顔を埋めた。

「…う…くぅ…っ」

―…ねが…お願い…っ―

「……やく…」

―早…く…早く…帰って来て…!!―













「コムイさん、コムイさん!!」

「グー」

相変わらず足の踏み場も無い程に散らかった資料や本の山の中、寝息を立て爆睡しているコムイとそのコムイを起こそうと肩を揺するアレンの姿があった。

「コムイさん、コムイさんってば!!」

「う〜ん…リナリーぃぃ

「はぁ…;」

一向に起きようとしないコムイにアレンは溜め息を着くと仕方無いなと耳に唇を寄せ

「コムイさん…リナリーが……バクさんと結婚するそうですよ」

そう言うと狸寝入りしていたのでは無いだろうかと言う位にコムイは素早い動きで起き何処に隠していたのか巨大ドリルと機関銃を手に椅子から立ち上がった。

「おはようございます…;」

「はれ?アレンくん?」

呆れながら挨拶するアレンに気付いたコムイはアレンの方を向き首を傾げた。

「いつ任務から帰って来たの?」

「ついさっきです。終わったんで任務報告に来たんですけどコムイさんが全然、起きてくれなかったんですよ」

「いやぁ〜そうだったのかぁ〜」

それはごめんねと謝りながら笑いコムイは再び椅子に座りアレンは帰って来る前に書いておいた任務報告書を差し出した。

「これが今回の結果報告です」

「ふむ…」

眼鏡越しに報告書を読むコムイの目の下にはうっすらと黒いクマが見えアレンはやはり疲れているんだなと感じた。

しかしここへ来る前に会ったリーバーは更に黒く任務に出る前より窶れていた。
それを見ればどちらの方がより疲れているかは一目瞭然だった。

―まぁリーバーさんの場合、仕事だけじゃなくてコムイさんにも疲れてるんだろうけど…;―

「…今回もイノセンスはハズレだった様だね」

報告書からアレンへ視線を向け苦笑するコムイにアレンは頷き

「はい、でもアクマの破壊は出来ましたから」

「大変だったね。今、エクソシストは人手不足してるからどうしようも無いんだけど…そのエクソシストを増やそうにもイノセンスも適合者もいない状態だからね」

「仕方無いですよ。新しいイノセンスと適合者が見付かるまでは僕らがしっかりしないといけませんし、他の団員の方達も頑張ってますから」

「そうだね」

ニッコリ笑うとコムイは机の上に置いてある判子を手にし報告書にポンッと押した。

「これでよしっと。じゃあ今日はもう休んでくれていいよアレンくん」

「分かりました」

「随分と汚れてるみたいだからお風呂にでも入ってゆっくりするといいよ」

言われてみれば団服は戦闘の後を物語り砂埃や血で汚れ飾りは取れボロボロになっていた。

「そうですね。そうします」

「うん、それじゃあお疲れ様」

「お疲れ様でした」

ペコリとお辞儀をするとアレンは室長室を出て行きコムイはふとある事を思い出した。

「…あれ…?お風呂と言えば確かバクちゃんが何かやってた様な…」

何だったっけ?と首を傾げ思い出そうとするが思い出せず

「うーん…ま、いっか♪」

―思い出せないと言う事は対した事じゃないんだろう―

そう認識したコムイは椅子から立ち上がり妹にコーヒーを淹れて貰おうと部屋を出て行った。











「うっわ…本当にボロボロだ…;」

空いている時間帯だったのか誰もいない大浴場に着いたアレンは早速、風呂に入ろうと服を脱ぎボロボロになった団服を見つめ呟いた。

「またジョニーに直して貰わなきゃなぁ…;」

毎回、団服をボロボロにしてはジョニーに渡しているがそのジョニーも自分の仕事で手一杯な事に気付いていたアレンはうーんと唸りながら団服を見つめた。

「…ジョニーに悪いと思って毎回、気を付けてるつもりではあるんだけどなぁ…;」

自分で直そうにも余りに汚れと破れ方が酷くアレンはガックリうな垂れると団服を籠の中へ入れ

―仕方無い…ジョニーには謝って直して貰うしか無いや…;―

腰にタオルを巻くとそのまま浴場へ向かい引き戸式の入り口を開け中へと入った。

「ん?」

中へ入れば白い湯気が立ち上りふわりと甘い香りが漂っていた。

「何だろこの甘い香り…」

花の匂いに似た香りにアレンはスンスンと鼻を嗅がせるとゆっくりタイルを歩き湯船に近付いた。

「あぁ、これか」

湯船は淡いピンク色に染まっていて中には幾つかの小さな花が浮かんでいた。

「コムイさんがまた何かの入浴剤でも入れたのかな…?;」

恐る恐る湯船に指を入れ一つの花びらを取るとアレンは警戒する様にマジマジとそれを見つめ嗅いでみたりした。

「…普通の花だよね…?」

見た目は本物の花で湯船に触れても何とも無くアレンの中で警戒心は薄れつつあった。

―もしかしてコムイさんじゃなくてリナリー辺りが入れたのかな…?―
 
 
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ