†本棚†
□Jealousy
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僕の恋人は東洋人でとても綺麗な人だ。
黒真珠を思わせる様な深い漆黒の髪と瞳。
整った顔立ち。スラリと長い手足。
どれを取っても非の打ち所の無い完璧な美しさを兼ね備えている。
髪が長い分、女性に間違われる事も屡々あるがそれ位、彼は綺麗だと言う事だ。
同性である僕すら綺麗で羨ましいと思える反面、その綺麗さがちょっとだけ憎らしい時もある。
その理由は決して彼には言えないけど…。
「あ、神田さんだ!」
「きゃあ!今日はホームに居たんだ〜」
食堂で食事をしていると遠くから女性団員の黄い声が聞こえた。
きゃあきゃあ言いながら頬を赤く染め神田の後ろ姿を見ている。
そんな声に気付いていないのかはたまた気付いていないフリをしているのか当の本人はしれっとし蕎麦を啜り続けていた。
「ねぇねぇ、声掛けようよ!///」
「え〜!何て言う訳?!///」
「普通におはようございますって挨拶すればいいじゃない〜」
「じゃあアンタ先に言ってよ〜」
「あなた先に言いなさいよ〜」
「…………」
きゃあきゃあ言い続ける女性団員達を見つめていたアレンは目の前で蕎麦を食べ続けている神田に視線を向けた。
「…神田」
「あ?」
「神田ってモテますよね…」
「……は?」
蕎麦を口に運んでいた箸を止め神田は間抜けた声を漏らしアレンを見た。
「聞こえません?後ろで神田を指差してきゃあきゃあ言ってる女性達の声」
「…知るかよ」
ぶっきらぼうに答えると振り向く事なく神田は再び蕎麦を啜りだし
「挨拶くらいしてあげたらどうです?あっちを向いて欲しいみたいですよ?」
「何で俺が。んな面倒臭い事しなきゃなんねぇんだよ」
「面倒臭いって君…;」
「周りが何を言おうが俺には関係無い。どうでもいい」
「………」
あっさりしていると言うか淡白と言うか…
周りに流されない彼の生き方は正直、嫌いじゃない。
寧ろ羨ましい位だとアレンは思った。
しかしそれとは裏腹に胸の中ではどんよりとした妙な気分が渦巻き微かに苛つきも感じた。
「いいじゃないですか。それ位してあげたって。彼女達ずっと君の事、見てますよ?」
そう言うと神田は箸を起き睨む様にアレンを見た。
「…だったらお前がしてやれよ。いつもみたいに気色の悪い作り笑いで」
そう言うと今度はアレンがムッとし神田を睨み付けた。
「僕の何処が作り笑いだって言うんですか?」
「全部がだよ。大体、テメェは周りに流され過ぎだ。
自分の事より相手の事ばっか気にして顔色、伺いやがって…気に入らねぇ」
「誰も君に気に入って貰おうなんて思ってません」
ニッコリ笑いながら答えるその目は笑っておらず神田はアレンを指差し
「それが作り笑いだっつってんだよバカモヤシ」
「バカって言う方がバカなんですよ?バ神田」
「ハッ、呪われてる奴にバカとなんざ言われる筋合いはねぇな」
「呪いは関係無いでしょう?!あぁ、バカだからそんな事も分からないんですね?バカな加藤さんは」
「誰が加藤かっ!!!」
徐々に火が着きだした二人は互いに睨み合うとフンッと左右に顔を逸らした。
「チッ!やってらんねぇ!!飯が不味くなった!!!」
「それはこちらの台詞ですよ!」
「あ゙ぁ?人間掃除機野郎が味覚なんてあんのかよ?」
「ありますよ!あるに決まってるでしょ?!
蕎麦しか食べれないマンネリ男と一緒にしないで下さい!!」
「誰がマンネリ男か!!モヤシのくせに!!!」
「モヤシじゃなくてアレンですってば!!」
「モヤシはモヤシだヒョロモヤシのノロモヤシが」
「き…君ね…いくら僕でもそこまで連呼されると…」
「お〜アレン、ユウ〜!!」
『!!』