†本棚U†

□大逆転!
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黒の教団、本部。

外へ繋がる出入り口の一つである方舟のゲート。
そのゲートが設置されている部屋からは賑やかな声が聞こえていた。

「到着さぁぁぁぁぁ!!」

淡く輝くゲートの光の中から出て来たラビは嬉しそうな表情で両手を上げ帰って来るなり叫んだ。

「喧しい!!」

間髪入れずそのラビにツッコミを入れ頭を殴ったのはラビの師でもあり一族の血縁者であるブックマンだった。

「い゙っ!な、何するんさパンダジジィっ!!!;」

前にのめり込みラビは後頭部に手を添え振り返りブックマンを睨み

「誰がパンダじゃいちいち騒がしいんじゃお前は!!」

「いいじゃんよ!無事に帰って来れたんだからさ!!」

「帰って来れた位で大声を出すな節度を守れ」

「…小姑ジジィ…」

「撲殺と絞殺どちらがいいんじゃ?」

「何でもありません!!;」

「…ったく…」

―本部に帰るなりいつもこれじゃ…―

ラビは駆け出し扉に向かい

「んじゃそう言う事でコムイへの報告は任せたさジジィ!」

「コラ!報告くらいきちんと自分でせんか!!」

「頼むさ〜俺は早く行きたいトコがあるんさ〜」

お願いと顔の前で両手を合わせるとラビは返事も聞かず扉を開け部屋を出て行ってしまった。

「…全く…」

出て行った扉を見つめブックマンは深い溜め息を着いた。

―またあやつの所か…―

ラビが急いで行きたがる場所が何処なのか。
それを察していたブックマンは更に深い溜め息を着き部屋を出るとコムイの居るであろう室長室へ向かった。











「はぁ、はぁ…」

荒くなる呼吸を肩で切りながらラビは長い廊下を駆け続けある場所を目指していた。

ある人物に会う為に。
早く触れて抱き締める為に。

ラビの頭の中はその人物の事で一杯になっていた。

「あら、ラビ!」

「!」

背後から声を掛けられ立ち止まり首だけを振り返ると資料を挟んだバインダーを手にしたリナリーと同じく資料や分厚い本を幾つも手に持ったリーバーの姿があった。

「おうリナリー!リーバー!!」

「任務から帰ってたの?」

「お帰りラビ」

「ただいまさ!今、帰って来たトコさ!!」

「そうだったの、ご苦労様。でもどうしたの?そんなに急いで…」

兄さんの所に行くの?と尋ねればラビは首を振り

「いや、報告はジジィに任せてるさ」

「じゃあ何そんなに慌ててるんだ?」

「あ…!」

何かを察したのかリナリーは口に手を当て小さく笑い

「分かったわ、そんなに慌ててる理由」

「?」

「流石さリナリー」

「さっき談話室に入って行くの見掛けたわよ?」

「ホントさ?!」

「えぇ、多分まだ居るんじゃないかしら」

「サンキューさリナリー!んじゃ!!」

それを聞くとラビは再び駆け出し二人はその背中を見送った。

「隅に置けないわねぇラビったら」

「?どう言う事なんだリナリー?」

意味が分からないままのリーバーは首を傾げリナリーはクスッと笑い

「ラビはある人に会いたくて急いでたの」

「ある人?」

そこでピンと来たリーバーはあぁと納得し

「成る程、そう言う事か…」

「そう言う事さ、私達も行きましょうリーバー班長」

「そうだな」

二人は再び廊下を歩きだし

「しかしラビがアレじゃブックマンも苦労するな」

「そうね。でも仕方無いわ。恋すると周りが見えなくなっちゃうものだから」

「リナリーもそんな経験が?」

「さぁ…どうかしら?」

小さく笑い答えをはぐらかすリナリーにリーバーは苦笑し

―…まぁ肯定されたらされたで問題だな…色んな意味で…;―

怒り狂う兄の想像をしつつリーバーはリナリーと肩を並べ歩き内心、呟いた。

「談話室、談話室っ!!」

リナリーから情報を聞いたラビは向かうルートを変更し談話室へ向かい走り続けた。

―近道して行くさ―

一分一秒でも早く会いたいとラビが曲がり角を曲がろうとした。

その時だった――


『!!』

急に現れた人物に驚き足に急ブレーキを掛けるが間に合わずラビはその人物と派手に衝突した。

「っで!!;」

「痛っ…!;」

二人は互いにぶつかると反動で後ろに倒れ込み石畳にお尻をぶつけた。

「ってて…ゴ、ゴメンさ!!;」

「いえ、こちらこそすみません!;」

聞き覚えのある…いや、一番に聞きたかった声に気付くとラビは反射的にその人物に抱き付いた。

「アレン〜〜〜ッ!!!!

「わっ!ラ、ラビ?!;」

ラビが真っ先に会いたかった人物、それは愛しい自分の恋人アレン・ウォーカーだった。

ラビは抱き締めたまますりすりと頬擦りし

「会いたかったさ〜アレン〜〜〜

「ち、ちょっとラビ…落ち着いて下さ……」

抱き付く相手の腕に手を添えるとアレンは固まりラビは首を傾げた。

「?どしたさアレ……」

少し身を離し顔を覗き込んだラビもまた凝り固まった。

「……え?;」

腕の中に居たのは美しい白銀の髪を持った少年では無く自分だったからだ。
 
 
 

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