‡小話‡
□呼ンデ
1ページ/5ページ
ねぇマナ…僕の名前を呼んで…?
僕は「●●●」なんかじゃないよ?
マナが付けてくれたあの名前を…
「アレン」って呼んでよ…
僕は「14番目」でも「●●●」でも無い
アレンだよ?
「………ッ」
微熱で魘される中、意識を取り戻した灰色の瞳がゆっくりと開かれるとまだ覚醒しない頭に暫くボーッとし少し身じろいだ。
「…ぅ…っ」
先の怪盗Gの件で負傷した物とは別に自らのイノセンスにより負った傷の痛みにアレンは小さく呻くと顔をしかめながら上半身を起こした。
「……夢……?」
自嘲気味に笑うとアレンはクシャリと前髪を握り顔を覆った。
―何だろう…何か…懐かしい夢を見ていた気がする…けど…何故か…悲しい夢でもあった気がする…―
アレンは顔を覆ったまま空いた手でギュッと力強く布団を握り締めた。
―胸が苦しい…押し潰されてしまいそうな位に……ツライ…ッ―
「起きたか」
「!!」
急に声を掛けられアレンは大きく肩を跳ねさせると顔を覆っていた手をゆっくり下ろし声のした方へ視線を向けた。
「…神田…?」
すると隣のベッドの上では本を手に自分を見つめる神田の姿があった。
「…い…いつから居たんですか?気配、消すの止めて下さいよ…;」
何時もの様に上手くポーカーフェイスが作れずアレンはぎこちない笑顔でビックリするじゃないですかと言いそれを見つめていた神田は小さく息を吐き本を閉じるとベッドから腰を浮かせた。
「…熱はどうなんだ?傷は?」
「え?あ、だ、大丈夫ですよこの位。大した事、無いし…」
「………」
歩み寄ると神田はジッと白い肌に目立つ聖痕の様な傷痕に腕を伸ばすと握り拳を作り軽くその傷を押した。
「ッッ!!」
するとアレンの顔は見る見る苦痛に歪み前に屈み込み
「なっ…なに…するんです…っ!!」
ズキズキと疼く傷にアレンはキッと神田を睨み付け当の本人はシレッとし腰に手を当て
「何処が大した事ねぇだよ。やせ我慢しやがって」
「………っ」
「あんだけ無茶すんなっつったのにこんな傷作りやがって…ホントにバカだろお前?」
「んな!?無茶はお互い様でしょ?!」
神田だって無茶したじゃないですかと反論すると神田の手が再び伸び今度は額を包み込んだ。
「え?ちょっと…?;」
「…フン…まぁ熱は下がって来てるみてぇだな…」
「…あの…神田…?」
「あ?」
「…もしかして…僕を心配してお見舞いに来てくれてたんですか…?」
「………」
上目遣いに尋ね見上げて来るアレンに額から手を離すと神田はアレンのベッドに腰を下ろし
「別に。図書室行ったついでにたまたま部屋を通り掛かったから様子見に来てみただけだ」
腕を組み答える神田にアレンは目を細めるとクスッと笑った。
―様子見って…それをお見舞いって言うんですよ神田…。
それに図書室とこの部屋は全くの逆方向。
たまたま通り掛かる事なんて出来ないなんて言ったら拗ねちゃうかもしれないな―
「何だよ?」
「いいえ、何でもありません」
ニコッと笑い答えると神田は微かに首を傾げ白銀の柔らかい髪に指を絡ませ
「まだ怠いんだろうが。寝とけ」
「いえ、ホントに今は大丈夫です。それに睡眠は十分、過ぎる位に採ったから目が冴えちゃいましたし」
「涎垂らしてグースカ寝てたもんな」
「え!?///;」
そう言われるとアレンはバッと腕で口元を覆い神田はクスッと笑い
「嘘だ」
「か…か〜ん〜だぁぁぁ?///」
アレンは神田のシャツを握り締め引っ張ると幾つか外された釦の隙間から見える梵字を目にした。
「?なんだ?」
「あ…いえ、なんか神田とお揃いのモノが出来た気がして…」
「お揃い…?」
首を傾げる神田にアレンは頷き自分の胸の傷を指差し
「形や場所は全く違うけど何か…神田の梵字と似てる気がしてお揃いだなぁって」
「………?お前、時々ワケ分かんねぇ事、言うよな」
頭、大丈夫か?と更に髪を撫で付けて来る神田にアレンは頬を膨らませ
「いいんですよ!神田には分からなくても僕が分かってれば」
「じゃあそう言う事にしとけ」
「そうします」
そう答えるとアレンはそのままポスンと神田の胸に額を当て擦り寄り
「…どうした。一人ではしゃいで熱がぶり返したか?」
「…そんなんじゃないです」
背中に腕を回され抱き締められるとアレンは神田のシャツを握り身体を預け
「……ねぇ神田…」
「なんだ?」
「…名前…呼んでくれません?」
「は?」
「僕の名前…呼んで欲しいんです」
何故だか…無性に…
名前を呼んで欲しくなった。
愛おしい人に…大切な人に…
「アレン」って呼んで欲しい。
「何だよ急に…」
「いいから…呼んで下さい…お願い…」
か細く懇願するアレンに神田は見下ろし優しく背中を擦ってやり口を開き
「…アレン」
「…もう一回…」
「アレン」
「………」
名前を呼ばれるとアレンは心の中にある不安を掻き消され何かで満たされるのを感じ身体から力を抜き目を細めた。
「…ありがとう…神田」
身を離そうとすると神田はそれを制しギュッと抱き締めた腕に力を籠めアレンはキョトンとし
「神田?」
「………」
ほんの少しだけ身を離すとアレンは顔を上げ神田を見上げ灰色の瞳と漆黒の瞳がぶつかり合った。
「…あの…?」
「………」
神田は背中に回していた片手をアレンの頬へと持って行きゆっくり撫でアレンはピクンと反応し
『………』
そのまま下唇を指でなぞれば薄く口が開かれ二人はどちらからとも無く顔を近付け唇を重ねた。
「…ン…ふ…」
最初はただ重ねるだけのキス。
そして啄む様なキスになり神田は舌を伸ばしアレンの唇を舐めると口が開きそのまま舌を口内へ滑り込ませ中を撫で回した。
「ンッ、ンン…///」
まるで生き物の様に口内を撫で回す舌の動きにアレンはビクつきながら神田のシャツを更に握り締め声を漏らした。
「んく…んっ、ふ…///」
中を撫で尽くすと今度は小さな舌に絡み付きアレンはビクッと肩を跳ね思わず舌を引っ込め様とした。
しかし神田はそれを許さず舌を絡み取り撫でてはチュ…と吸いそれを繰り返した。
「ンゥ?!ンッ、ンンッ…///」
互いの混ざり合った唾液が溢れ飲み込みきれずアレンの口端から流れ顎を伝いシーツに落ち息苦しくなりだした頃、漸く唇と舌が離れアレンは酸素を肺の奥まで取り込んだ。
「ッハァ…///」
互いの唇を繋いでいた透明な糸がプツリと切れるとアレンの顎に伝い神田は親指でそれを拭ってやり
「…ン…神田…ッ」
充血し水分を帯びた灰色の瞳は潤みながら媚びる様に神田を写し
「……シよ…?///」
甘く囁き誘えば漆黒の瞳はスッと細くなりゆっくり枕に押し倒されアレンは神田を見上げた。
「いいのか?お前、まだ傷が疼くんだろ?」
「ん…平気だから…」
「それにあのホクロ二つもいつ帰って来るか分からねぇぜ?」
白く薄い首筋に顔を埋めながら尋ねる神田にアレンはされるままになり
「リンクなら大丈夫ですよ…僕が眠る前…資料が必要だから図書室に行くと言ってましたし…。
直ぐには帰って来れなさそうな感じでしたから…」
「願ったり叶ったりだな」
首筋に強く吸い付き紅い痕を付けながら神田はポツリと呟きチリッとした痛みにアレンは微かに反応し
「んっ…ぁ…」
幾つもの痕を鎖骨や胸、肩に残すとそれを舐めその度にアレンは小さく声を漏らした。
「ン、ふ…ぁ///」
そのまま胸の赤い突起に舌を這わせだすと柔らかだったそこは直ぐに硬さを持ち
神田は丁寧に舌先で舐め続け舌の腹でねっとりと舐めるとアレンの身体はゾクゾクと震えた。
「あ、ん…っ///」
唇で吸い上げ軽く歯を立てればアレンは甘い声を漏らしギュッと漆黒の髪を抱き締め身を竦めた。