‡小話‡

□little good-bye
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…身体中あちこち痛い…

当たり前か…色んな事が一変に起きすぎなんだよ…

神田の過去を見せられたと思ったらアルマが覚醒するし

神田は我を忘れちゃうし…
何も考えちゃいないし…

止めるこっちの身にもなれって感じだよ…




でも…分かってる…。




一番、ツライのは……



一番、苦しい思いをしてるのは……



この二人なんだ。







「…あきれた!一体、何考えてんのかと思ったらキミ何も考えてませんね?」


二人の記憶を視た僕だから…


「こんなになったアルマを目の前にして…」


二人の絆を視た僕だから


「思考に蓋をした…考えると辛いからアルマと正面から向き合おうともしない…っ」


君がどんなにアルマのコトを思っていたか今なら分かる僕だから…


「教団への怒りを捨ててでも一緒に生きたいと思った大事な人じゃないんですか!!」


だから……



「なに逃げてるんだ神田ッ!!」


君を…君が想う大切な人を…救済し(すくい)たい…!!









…分かってる…。

そんな事、言われなくても分かってんだ。


「なんなんだよお前?」

偽善者面するコイツ(モヤシ)にイライラする


「アルマをアクマにしたのはお前だろ」


俺もアルマもただの被害者なんだ。


「支部を潰し第三使徒を化物にしたのも…」


…オレは…赦せない。

こんなセカイが…こんな事をしたコイツらが…

オレ達を生み出した奴らが赦せない…!!


今になってコイツにイライラしていたモノが…

溜まっていたモノが吐き出される。



「ノアのくせに教団にいるお前のせいだろ」



オレ達はただ…一緒に居たかったんだ…。

一緒に居て、生きて…それだけを望んだんだ。



だがコイツらはそれすら許さなかった。


結果、あんな惨劇が出たんだ。



アルマは悪く無い。

悪いのはオレ達を生み出した奴らだ。


アルマは十分、苦しんだ。

もう…十分過ぎる位に…


だから…――





「神田ぁ!!」


誰かのせいにしないと気が済まない。



「全部お前のせいだろがノア野郎ぉっ!!」


誰かにこの怒りをぶつけないと気が済まねぇんだよ!!!



「お前なんかに…っ俺のなにが解んだよ!!!」


俺の何が分かる…!!

少し親しくなっただけで俺の何が分かる?!

お前は…俺の外見しか知らないクセに…


「神田ぁぁぁっ!ただアルマを破壊するだけで…っ
それで本当に終われるんですかぁぁ!!」


「………っ!!」



ウルサイ…ウルサイウルサイウルサイウルサイ!!!


知らないクセに…何も分かってないクセに…!!!!


俺が六幻を突き出すとモヤシは左腕のイノセンスの発動を止めていた。


まるで…


俺の怒りを気持ちを全て受け止めてやると言う様に…






気が付くとモヤシはオレの肩に手を着いていた。


「ちゃんと…アルマの顔、見てくださいよ…」


―…モ…ヤシ…?―


「なんで…あんな顔するのか僕じゃ全然…」


―…なんで…お前…肌の色が…―


「わからないんですよ…っ」

そう言うとモヤシは苦笑いしながら俺の肩を強く押し返し同時にモヤシの腹を貫いていた六幻が引き抜かれた。

「…っモ…モヤシ…っ」





この時、何故か…俺の脳裏には走馬灯の様な微かな記憶が過ぎった。











「神田」

「あ?」

「…もし、僕が本当に『14番目』に成ったら…その時は…君が僕を殺して下さい」

「!」

「みんなの前ではあぁ言ったけどやっぱり殺されるなら君がいいです」

「…なんで俺なんだよ?」

「えっ?だって神田なら躊躇せず一思いにやってくれそうじゃないですか」

「…お前な…;」

「それに…」

「?」

「どうせ死ぬんなら…僕が僕でなくなるんなら…愛した人の手で死にたいから」

「……!!」

「だから…もし、そんな時が来たら…君が僕を殺して下さいね?」










「モヤシ!?」

「ありがとウ神田ユウ

「!?」

「覚醒デスヨ!!!貴方がイノセンスでアレン・ウォーカーをボロボロ〜に傷つけてくれたおかげで!
彼の内に潜む『14番目』が完全に呼び起こされたのデスヨ!!」

「!!」

「ノアは神への憎しみを決して忘れナイ
傷つけられれば傷つけられる程それは噴き出すノデス

―俺があいつを…ノアへと覚醒させてしまった…?―





「君が僕を殺して下さいね?」






次の瞬間、俺の腕の中に居たアルマの身体からは神々しく光を放っていた。
それが何を意味するのか俺は直ぐに悟り腕を伸ばした。



―なんで……―


「なんでなんだよアルマ!!」

















僕はまるで石化した様にボロボロになった神田に被さり吠えた。

「どぉして…神田はどうなる……っなにも知らずこの9年間、生きてきた神田は…神田の気持ちはどうなるんだよッ!!」


これじゃあ…これが真実なら…この人は一体、なんの為に今まで生きてきたんだ…!!

ただ…愛してた女性(ヒト)と再び逢う為に

ただ…愛してた女性(ヒト)との「約束」を果たす為に

アルマと言うトモダチを犠牲にし生きてきたのに…!!

それなのに…その犠牲が…ずっとずっと捜し求めていたヒトだったなんて…!!!


「いえないよ…ぼくが「あの人」だってわかったら…ユウはもう探してくれない…」

「!!」

「あの日の約束…ユウが「あの人」との約束に縛られてる限り……彼はずっと「あの人」のものなの…ずーっとね…」


この時…複雑そうながらも幸せそうに微笑むアルマが…いや…神田の愛してた女性の気持ちが…僕は理解できた…。

何故なら…僕がこの人でも同じ事をしたかもしれないから…。



愛する人に自分だと知られる位なら…



愛する人が自分がもうこのセカイに存在しないと知られ忘れられる位なら…



愛する人から手放される位なら…



互いを繋ぐ唯一の楔を千切られる位なら…




「どうしても…この人だけは失いたくなかった…っ!!」



「……っ」




適わないと思った。


どんなに僕が彼を愛したとしても

どんなに僕が彼が僕だけを愛してくれる様に気を惹いても

彼はこの女性(ヒト)を忘れる事はない。

彼のこの女性(ヒト)に対する想いは執着心は掻き消す事は出来ない。

だって二人は…こんなにも互いを想い合っていたのだから…。



ずっと…ずーっと……

「アルマ」と「ユウ」として生まれ変わる前から…ずっと……


「優しいね……」

そう呟き涙を零すアルマに僕は胸が締め付けられるのを感じた。

アルマ…僕は優しくなんかないよ…

これは…ただ…少しでも彼の為に何かしたいと言う







僕の……










利己(エゴ)なんだ
















「………」



徐々に身体が再生して行くのを感じながら俺はアルマとモヤシの会話を聞いていた。




あぁ…そうか…そうだったのか……




俺がずっと探していたのは…



ずっと交わしたかった約束の相手は……


お前だったんだな…アルマ…






「モヤシ…」

「!」

モヤシが振り向くと身体のパーツが辛うじて戻りつつある俺を見た。

「神田…!!」

「…頼みがある…」

「え…?」

「…方舟のゲートを…開けてくれ…」

「!!」

 
 
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