‡小話‡

□Knee pillow
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黒の教団にある中庭。
そこは他のフロア同様、多彩な目的として使われている場である。

ある時は自然な太陽の光と風で戦闘で疲れた団員達の心を癒やす為の寛ぎの場所であったり

ある時は趣味で花や植物を栽培する場所であったり

ある時はちょっとしたアウトドアスポーツを楽しむ場所でもあったりする。

そんな場所で芝生の上に座り込み木漏れ日が差し込む木の幹に凭れ瞼を下ろす一人の少年、神田の姿があった。
漆黒の長い髪は髪紐で一つに結い上げられ風が吹くとサラリと流れ靡いた。

「………」

座禅を組む様にジッとし耳に神経を集めていると自分の方へ向かい歩いて来る足音が聞こえ神田はゆっくりと瞼を開くと背後から近付いて来る足音の方を振り向いた。

「わっ、神田!?」

「!モヤシ…」

振り向いたその先には白銀の髪と灰色の瞳が印象付ける恋人、アレンの姿があった。

「ただいま神田」

ニコッと笑い見下ろして来るアレンに神田は目を細めると再び前を向き返事を返した。

「あぁ…」

「まさか神田が居るなんて思わなかったなぁ」

ストンと自分の隣に腰を下ろし膝を抱え込みながら呟くアレンに神田は首を傾げ

「なんの事だ?」

「さっき任務から帰ったらラビに会って任務報告に行くんなら中庭を抜けてから行った方がいいって言われたんです。
どうしてかと聞いたらラビが…」



『意外なヤツが昼寝してるからレアな寝顔が見れるさぁ


「……って。誰の事かと思ったら神田の事だったんですね」

「…………」

―あのクソ兎…人がここで寛いでるの見ててやがったな…?

眉間に皺を寄せ小さく舌打ちする神田に今度はアレンが首を傾げた。

「どうかしました?」

「別に。つかお前、任務報告に行くんじゃねぇのかよ?」

砂や埃にまみれになっているアレンの姿はアクマとの戦闘を物語っており神田は目を向け尋ね

「うーん…そのつもりだったんですけど…神田が居るんならもう少しここに居ようかと」

「は?意味分かんねぇぞ;」

「一緒に居たいって事ですよ」

「!」

自分と似て頑固で意地っ張りなアレンがこうして時々、ストレートに自分の思いを口にすると神田は反応に困り慌てて目を逸らした。

「…好きにしろ」

「はい、そのつもりです」

他人だったら必ず『ウザイ』だの『邪魔』だの言い追い払う神田が許可を出し自分の側に置いてくれる。
それが嬉しく思えアレンは笑顔を向けた。

「でも本当に珍しいですね」

「あ?」

「神田がこんな所でお昼寝するなんて」

「誰が昼寝してるなんて言った。俺はただ寛いでただけだ」

「だったら尚更、珍しい事じゃないですか。何時もなら大抵、修練場で座禅、組んでるか自分の部屋で寛いでるじゃないですか」

「修練場は他の奴らが鍛錬してて騒がしくて座禅なんて組めなかったんだよ。
かと言って自分の部屋まで帰るのも遠い上に面倒臭かったからここで寛いでた」

「面倒臭いって…;」

相変わらずの身勝手さだなと内心、思いつつアレンは苦笑すると木の幹に背中を預け葉の隙間から覗く太陽の光を見上げた。

「…でも確かにココはいいですね。人は余り来ないし外の空気は吸えるしお昼寝するには丁度いいかも」

うーんと両腕を空に向けながら伸びをしアレンは言い神田は小さく息を吐き

「だから俺は昼寝じゃねぇって…」

「…でも神田、眠そうですよ?」

「……は?」

ジッと見つめて来るアレンに神田は顔を向けキョトンとし

「お前…俺のどこが眠そうに見えんだよ?」

「えー?だってほら、薄くですけど目の下にクマが出来るし…その目だって充血してますよ?」

「!!;」

これって寝不足だって事でしょ?とアレンは逆に尋ね神田は顔を逸らし

「…気のせいだ」

「気のせいなんかじゃありません。絶対、寝不足です」

「………;」

いくら自分が持つ能力の一つである治癒力が高いとは言えこんな細かい所までは治せず神田はバツが悪そうな表情をし再び舌打ちをした。

 
 
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