‡小話‡

□愛鍵
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君から貰った大切な大切なモノ……



君から貰った大事な大事なモノ……



沢山ある貰ったモノの中で一番、嬉しかった。













黒の教団の地下にある用水路。

そこに一隻の小舟が着くと団服を着たアレンが先に降り次に降りようとしたリナリーに手を差し伸べた。

「気を付けて下さいリナリー」

「ありがとうアレンくん」

紳士的に気遣うアレンにリナリーは嬉しそうに笑うとその手を握り小舟から降りた。

「では私はこのまま次の任務地へ向かいますので」

舟を漕いでいたファインダーはリナリーが降りるのを確認すると持っていた棒を動かし始め二人は頷き

「分かりました」

「気を付けて」

「はい、お二人共お疲れ様でした」

軽くお辞儀をし舟を出すファインダーを見送ると二人は階段を上がり始めた。

「今回の任務もハードだったわね」

「そうですね、アクマの数も半端無かったですし」

「イノセンスは無かったけど大した怪我をしなかっただけでも良かったって思わなきゃね」

「えぇ、一般の方に被害が出る前で良かったと言う点もありますし」

階段を登りきるとアレンは急に胸元の服を握り締めそわそわしだしリナリーはクスッと笑った。

「リナリー?」

急に笑うリナリーに気付きアレンは首を傾げ

「あ、ごめんなさい。早くソレ使いたいんだなぁって思って」

「!そ、そんな事、無いですよ?!///;」

リナリーに胸元を指差されアレンは慌てて手を離しパタパタと左右に振り顔を赤くした。
リナリーの言うソレと言う物、それは……











「おい」

「はい?」

任務に出る数日前。
互いに任務が入り明日から会えないと分かったアレンと神田はその晩、いつも以上に互いの身体を求め合った。
その事情が終わりを告げた直後、アレンの中から抜け出した神田は身を離しベッドの下で脱ぎ散らかっている二人分の服の中から自分のシャツとズボンを拾い上げ袖を通し
アレンは荒い息を整えながら未だ身体に残る余韻を感じながらゆっくりと身体を起こした時だった。

声を掛けられ振り向けば銀色の何かを放り投げられアレンは反射的にそれを受け止めた。

「わっ!ちょ、いきなり何……」

何を投げられたかと手の中を見るとそこにはキラリと光る鍵があった。

「鍵…?」

―あれ…?この形の鍵…どこかで見覚えが…―

「持っとけ」

「持っとけって…これ、何処の……」

そこまで言いかけるとアレンはハッと察し神田を見上げ

「ここの鍵…?」

そう尋ねれば神田もアレンを見下ろし小さく頷いた。

「…任務で擦れ違った時、お前いっつも自分の部屋で待ってるだろ。
そうでなきゃ談話室辺りでずっと俺が帰るの待ってるし…」

「だって神田の部屋を通るには談話室を通らなきゃいけませんし、あそこに居れば神田が通り過ぎるの分かるから」

「とか言いながら毎回、ソファーでグースカうたた寝してんのは誰だよ」

「うぐ…;」

「あんな所で寝てるから兎に悪戯に落書きされたり変な野郎共が囲んで寝顔を見に来たりすんだよ」

「だ…だって自分の部屋に居たんじゃ神田が帰って来てるか分からないし…神田も僕が帰って来てるかどうか分からないと思って…」

「だからってあそこで寝るな毎回、奴らを追っ払う俺の身にもなれ」

「…すみません…;」

シュンとし小さくなるアレンに神田は息を吐くと白銀の髪に触れ

「だから、待つんならここで待ってろ。それなら確実だろう」

「神田…///」

「それに…」

「?」

「ぶっちゃけ毎回、お前の部屋まで行くのもメンド臭かったしな…」

「神田…;」

それが本音かとアレンはガックリと頭を垂れれば神田はクスッと笑いベッドに腰を掛けアレンを腕に包み抱き締めた。

「妙な虫はつかねぇしお前には確実に会えるし一石二鳥じゃねぇか」

「うーん…;」

上手く丸め込められた気がしつつも神田が自分の部屋の鍵をくれた事の方が大きくアレンは広い背中に腕を回し

「まぁいいです。神田がそう言うなら」

「あぁ」

チュッと音を立て髪にキスを落とせばアレンは顔を上げ

「…大切にしますね///」

「後生、大事にな。無くしたなんて言った日には刻まれると思えよ?」

「…気を付けマス…;」

ピシッと固まり頷くアレンに漆黒の瞳がスッと細くなり今度は唇にキスを落とした。







翌日、リナリーと共に任務に出たアレンは律儀に一番、上まで留めていた団服の釦を外しリボンタイを少し緩めると中へ指を差し込み中から細いチェーンで繋がった神田の部屋の鍵を取り出し見つめていた。

 
 
 
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