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□Halloween
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長い廊下を歩きながら窓辺にくり抜いたカボチャを置くと中に小さなキャンドルを入れ火を付けアレンはそれをじっと見つめた。
「…綺麗…」
日が沈み暗くなって来た景色をバックにキャンドルの炎はカボチャを淡く光らせアレンは目を細め呟いた。
「さてと…次の場所に置かなきゃ間に合わなくなっちゃう」
アレンはその作業を繰り返し次々と教団の至る場所へ作ったカボチャのキャンドルを灯して行った。
「あ、いたいた!アレンくん!!」
「!リナリー」
最後の一個に火を灯すと廊下を駆けて来たリナリーに呼ばれアレンは振り返った。
「わぁ、リナリー可愛いですね!!」
振り返った先には黒いフリルの付いたミニスカートにマントと三角形に尖った帽子を被ったリナリーの姿があった。
「ふふっ、今年はリトルウィッチにしてみたの」
「凄く似合ってますよ」
「ありがとう飾り付けは終わった?」
「えぇ今、最後の一個を置いた所です」
「流石アレンくんね。手先が器用だから可愛いカボチャの置物だわ!」
「ありがとうございます。リナリー達の方はもう終わったんですか?」
「うん!大聖堂の飾り付けも終わって今、ジェリーが沢山のお菓子を運んでくれてるわ」
「そうですか」
「兄さん達ももう仮装をしてるわ。はい、これ」
「?」
リナリーは持っていた紙袋を差し出しアレンはそれを受け取り
「アレンくん用の仮装の衣装よ。それを着て大聖堂に来てねラビにもさっき会って渡してあるから」
「ありがとうございますリナリー」
「いいのよじゃあ大聖堂でね!」
「はい!」
リナリーは踵を返すと手を振り戻って行きそれを見送るとアレンは紙袋を見つめた。
「一体、どんな服だろ…」
「…なんだコレは…;」
任務から帰って来た神田が目にしたのは廊下に並ぶカボチャの置物と天井やら壁にテカテカと飾られた飾り付け一色だった。
「何があったんだ今度は…;」
明らかに何かのイベントであると気付き神田は任務明けの疲れとは違う別の疲れを感じ深い溜め息を吐きながら廊下を歩き出した。
「………;」
―…なんか前にも無かったか…?こんな事…;―
余り深く考えたくも関わりたくも無いと思い自分の部屋へ向かい曲がり角を曲がった時だった。
「うわっ!!;」
「!」
急に出て来た人影とぶつかると相手は派手に転び尻餅を着き神田も少しバランスを崩しつつも倒れた相手の方を見た。
「いっ…たたた…;」
「チッ…おい、どこ見て……」
「す、すみません!;って……」
神田は相手を…正確には相手の格好を見て驚き目を見開いた。
そこには白銀の髪に映える黒い猫耳のカチューシャを付け肩を露出したハイネックの服の背中には悪魔の翼を付け真紅のスリットの入ったミニスカート姿のアレンがいたからだ。
「か、神田?!///;」
「お…おま…なんて格好してんだよ!?;」
「あ…い、いや…あの、これはですね…リナリーが仮装にと渡してくれた衣装だったんですけど…;」
「仮装だぁ?;お前ら…また何やってんだよ…;」
「なにって…今日はハロウィンじゃないですか!」
「ハロウィンだぁ?;」
神田が手を差し出すとアレンは腕を伸ばしその手を掴み立ち上がり
「そうですよ。だから今日はみんなでハロウィンパーティーをするんです!その為の衣装をリナリーから貰ったんですけど…着てみたらこんな格好で…;」
「はぁ……;」
とことんお祭り騒ぎが好きな奴らだと神田は呆れ歩き出し
「神田?何処に行くんです?」
「部屋に帰る」
「ちょっ、待って下さいよ!パーティーに参加しないんですか?!」
「誰がするか」
基本的に群れる事が嫌いな神田にとってはパーティーなどもっての他。
当然と言えば当然の答えにアレンはムッとし神田の腕を掴み止め
「…何だよ?」
「神田も参加して下さい。みんなも待ってますから」
「はぁ?!;」
ニコッと笑い引っ張り出すアレンに神田は慌てて逆の方向に身を退き
「俺は行かんと言っただろうがっ!!;」
「いいじゃないですかたまには!!きっと楽しいですよ?!」
「そんなチャランポランな格好して何が楽しいかっ!!
楽しみたきゃテメェらだけで勝手にやってろ!!!;」
「…ふぅ…仕方ありませんね…」
「!」
小さく息を吐くとアレンは神田の腕を離し
「神田がパーティーとかお祝いとか嫌うのは知ってますがそこまで嫌がるなら仕方ありませんね…。あ〜あ〜残念だなぁ」
「…フン」
神田は再び歩き出し
「…因みにこの企画、リー兄妹が企画してるんですよねぇ…」
「………」
「教団に居る団員は強制、全員参加なんですよねぇ…」
「………」
「教団に居るのに参加しなかった団員は後日、一人で仮装させて教団の中を一周させて晒し者にさせるってコムイさんが言ってたなぁ…」
「!!!;」
それを聞くと神田の足がピタリッと止まり
「今、パーティーで笑われるよりかなり恥ずかしい醜態を晒す事になるんでしょうねぇ〜。
きっと今日、参加しといた方が良かったって後悔するんだろうなぁ〜」
「…テ、テメェ…モヤシ…;」
神田はゆっくり首だけを振り返るとその綺麗な顔立ちは見る見る歪みアレンを睨み付け
「あ、大丈夫ですよ。僕は神田が教団に帰って来ていた事、言いませんから。口が滑らなきゃ」
爽やかな笑顔で答えるアレンが悪魔に見え神田は口元を引き攣らせアレンに近付き
「言う気、満々だろ貴様」
「あははは。まっさかぁ〜ただパーティーの楽しさにハメを外したらどうなるか分からないだけですよ」
「………;」
ニコニコ笑い続けるアレンに神田は肺の奥から深い溜め息を吐くと諦めたのかガックリと肩を落とし
「…分かった。連れて行けよ…;」
「流石、神田ですね!!」
そうとなれば気が変わらない内に行きましょうとアレンは再び神田の腕を掴むと駆け出しみんなが待つ大聖堂へと向かった。
「………;」
―嫌な予感がしてならねぇ…;―
引っ張られながら神田は内心ポツリと呟き本日、何度目か分からない溜め息を着いた。