short*over

□☆溢れる内声
5ページ/7ページ



ヒロトは真剣な表情で俺の話を聞いてくれた



やがて、深い溜め息をつくと俺を睨んできた



「あのさ、君ってそんな腰抜け野郎だったっけ?」


「分かってんだ……どれだけ最低な事したってことはさ」


「馬鹿じゃないの?」



「……どういう意味だ………」


「過去の事反省すんなら、夫婦円満な家庭作るんだね。」


「でも……19で、子供って」


「ああ、もうそういう考え論外。こっちだって似たような状態だしね」


「は?」


「リュウジー」

リュウジっていう男みたいな名前の緑色の髪の奴が部屋から出て来た


「俺の彼女」


「あー!お前、いつも大学のサークルで風介と一緒に居た……」


「聞きましたよ!風ちゃん子供出来たんだってー」

「何で……それを?」


「だって電話掛かって来ましたもん。あんまり嬉しいのか泣きながら話してましたよー」


「!!!!」


「晴矢………」


泣いていたのか、あの風介が


辛いだろうな


ヒロトはリュウジに事情を話していた

リュウジの表情はみるみる内に暗くなり、最後には泣いてしまった


「リュウジ…何で、君が泣く事ないんだよ」


「ごめ、ん……風ちゃんの方が辛いだろうに……晴矢、さん」


「何だ……?」


「風ちゃんと、いい家庭作って下さ、い……」


泣きながら頭を下げられたから思わず慌てた


「何でそこまで……?」


「私は多分…晴矢さんより、風ちゃんの気持ち分かってあげられる自信、あります」


「………」


「風ちゃん、いつも晴矢さんの事話してる時、すっごい楽しそうで、幸せそうで……

本当に、好きなんだなって分かって」


あいつ、そんな事してたのか


こんな最低で我儘な俺を


「だから風ちゃん…!電話の時、凄く嬉しいって言ってて……晴矢との子なんだって……」


「ああリュウジ…あんまり無理して喋らないで」


「お願いします……風ちゃんと、風ちゃんと……」



「晴矢………大丈夫だよ。君なら風介を幸せにしてあげられる」



俺に?風介を幸せに出来る保証なんてあるのだろうか



「君は風介を愛している。その気持ちを大事にしなよ」


胸が大きく高鳴った


ドクン…ドクンドクン




そうだ…風介への愛なら、誰にも負けない自信がある


一度思っていると際限なく風介の事しか考えられない

重症ではあるが悪いもんだとは思わなかった




俺は風介が好き




「あはは、やっと元に戻ってきた」


「あ……分かるか…?」


「だって顔がにやけてる…頬緩んでるよ」


「あー本当だ…晴矢さん風ちゃんにいかがわしい事しないで下さいよー」


「ば!分かってるわ」


「それじゃあさ、明日風介の家行こう?」



少し怖くなった

だけど、会いたかった



「ああ」


力強く返事を返した
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ