short*over

□☆溢れる内声
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*風介視点







どうしよう、どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう





たった一つの言葉が、頭に浮かんだ






先週、腹に子を授かった


今月中旬から何だか不調が続いていて、吐き気、体重の増加、食欲不振



明らかに可笑しいと思っていた


彼、晴矢も私の事を凄く心配してくれて、最終的に病院に行く羽目となった



体の状態を出来る限り医師に伝えると、産婦人科の専門の病院へ行かされた




私も晴矢もまさか、と思ったが、案の定お決まりの言葉が振り掛けられた


「おめでとうございます。風介さん、妊娠なさってますよ」




「…………」

「……………」


お互い何も言わないままで医師が不安気な顔を浮かべた後、有難うございます、とだけ晴矢が言い病院を後にした




「……………」


「…………晴……矢」

終始無言になると思われたが、自分はそれが許せなかった




「風……介…」


次の瞬間、私は目を大きく見開いた





晴矢の顔は、これまでにない程やつれていた




晴矢も自分と同じ、不安で仕方ないのだろう


今まであからさまに関係ないと思っていた事が、突然目の前に現れる


「俺……俺……!!俺は………」


「晴矢!落ち着け!」


晴矢は擦り切れそうだった




私だって、信じられなかった

信じたくなかった




本当でもいいなんて、思えなくて





今までの長い年月を掛けた関係が砂の壁の様に崩れていく感じがした





「風介………」



「何………?」




「その子、堕ろせ」

「………!!!!」 




信じられなかった

だって、晴矢は、私とずっと一緒で愛し合ってるのに


なのに、私との間で出来た子供はいらない?



そんなの、アリなのか?




「その子は、確かに俺達のせいで出来た子供だ……でも、俺達まだ19で…んなこと……」



バシッ




綺麗で、乾いた音がした



晴矢の頬が弾けた音


「ってぇな……なにす」


「最……低………」



気づいたら走りだしていた

ああ、でも子供が腹にいるんだがら、安静にしてなきゃいけないんだっけ



何だか、何がどうなってんだか




もう、何も分からない
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