ss

□jealousy
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パルトスの宿屋、眩しいくらいに光が降り注ぐ屋上から一人、空を見上げる



空はどこまでも青く澄み渡り、綺麗だった


















自分の心とは正反対に。




それほどまでに、今日の天気は穏やかに晴れ渡っていた













今、俺の心は暗い雲が立ち込めていて、今にも大雨が…というより、雷が落ちてきそうな、嵐が来そうな…



うまく言い表せないが、そんな感じ。



怒りにも似た、なんとも言えないもやもや感があった



他に言葉を当てはめるとすれば、不満?だろうか?



…なにが不満なのか分かんねーけど。













話は20分ほど前までさかのぼる












新しいアイテムはないかとショップを漁りに行った帰りに、街の広場でアレクとシェリルが話しているところを偶然見掛けたのだ





趣味が悪いとは思いつつも、二人の行方が気になったので、興味本位でこっそり近付いて話を盗み聞きさせてもらった





後に、聞かなければ、見なければ良かったと後悔するとも知らずに

































『シェリルって、なんだかクレッタさんに似てる気がするよ』



『クレッタさん?』



『ああ、クレッタさんていうのはルッツのお姉さんの名前なんだけど…』



『へぇ…あいつ姉がいるんだ。
まぁどんな人かは知らないけど、あたしと似てるなんてよっぽど気の強い人なんだろうね』



『うーん、そうだな…例えていうなら、シェリルみたいに芯があってしっかりしてて、とても優しい人だよ』



『…優しい?
なら、あたしとは随分真逆の性格の人じゃないか』



『そんなことないさ、シェリルはすごく優しいよ。少なくとも僕はそう思ってる』



『そう言われると、なんか照れるね…
自分ではそうは思わないけど、そうなのかな』



そう言って、シェリルは気恥ずかしそうに、少しだけ笑った



アレクはそれに対し、そうだよ、と再び笑って








シェリルの手を握った







































「…んだよ、シェリルってば、にやにやしやがって」



二人の笑い声が、頭の中で再生される



あの光景を思い出すたび、イライラがつのった






自分の姉を話のネタにされているのに腹が立っているのはもちろんのこと


だがそれ以上に、シェリルとアレクが仲良さげに話していることが



なぜか、自分でも本当に理由はよく分からないのだが



とてつもなく気に入らなかった







あの時のアレクとシェリルは、はたから見ればまるで仲の良い恋人同士で






面白くない







すごく面白くない



















それは、モテない自分の妬み、ひがみとはちょっと違った気がした


















jealousy
(嫉妬)
















二人が手を繋いだ瞬間、ショックを受けた












たまらずその場から逃げ出すように宿屋へと足を走らせる











この感情が嫉妬心だと気付くのは





もっと先のはなし。











END

 

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