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□拍手御礼ss@
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ある朝の出来事。
「なあルッツ、珍しくシェリルがまだ起きてないみたいなんだ。悪いんだけどちょっと起こしに行ってくれないか?」
親友のアレクに頼まれて、俺は珍しく寝坊したシェリルを起こしに二階の宿の一室まで足を運んだ
部屋の前まで来たので一応、ドアを3回ほどノックしたけど…反応は全くない
仕方ないのでそっとドアを開き、勝手に部屋の中に上がらせてもらった
部屋に入るとすぐ目の前にベッド
そしてその横に小さめの丸いテーブルがあった
テーブルの上にはシェリルの黒光りした一丁の拳銃が置いてあって、銃を中心にネジやらなにやら、部品らしきものがたくさんテーブルの上でバラバラに散らばっている
おそらく昨日は夜遅くまで銃の手入れをしていたのだろう
ベッドの上ですやすやと寝息を立てるシェリルに、そんなだから寝坊するんだばーか、と心の中でいつも罵られているぶんお返しに馬鹿にしてやった
そんなルッツの心の声をよそに、シェリルは未だすぅすぅと寝息を立てている
いつも不機嫌そうに寄せられている険しい眉間の皺は、今はなく
寝顔のシェリルはあどけなく、やわらかい表情をしていた
「腹出して寝やがって…風邪ひいちまうぞー」
いつのまにか腹の下までずれてしまったのであろう毛布を、肩までかけ直してやる
これでよし、
…………って違う違う!
起こしにきたのになんで毛布かけなおしちまってるんだ俺は!剥ぎ取るくらいしなきゃダメだろ!
「おーいシェリルー、朝だぞー起きろー!」
「…………」
一瞬もぞもぞと毛布の中で動いたが、よっぽどお疲れなようで起きる気配は全くない
……困ったなー。
「早く起きねーとシェリルの分の朝飯食っちまうぞ〜」
「…………」
軽く体を揺する
ついでにさっきかけ直してやった毛布もひっぺがした
「……早くしねーと置いてくぞー?」
「………ぅー…」
罰ゲーム的なことを言えば起きるかも…と思ったけど…
駄目だ、ぜんっぜん起きやしねぇ!
「シェーリールー…」
「…………」
シェリルはまだすーすーと穏やかな寝息を立てていて、爆睡。
いつも口うるさいから気にしてなかったけど、黙ってればけっこう可愛い顔をしてると思う
「なぁ…シェリル」
あんまりにもシェリルが目を覚まさないから、
ふと、ちょっとした出来心と下心でシェリルに悪戯を仕掛けてみよう、と思ってしまった
なに、ちょっとだけ刺激の強い朝の挨拶だって!
自分の中にある良心に弁解を入れつつ、俺はそっと顔をシェリルに近付けた。赤い髪で隠れてしまった見えない耳たぶに唇が触れるか触れないかの、ギリギリ。
そしてなるべく低い声で、一言。
「……早く起きねーとキスするぞ、本気で」
「…ルッツ、なにしてるんだ?」
「…ア、アレク…」
ちょっとカッコつけたセリフを言ったあとの、すぐ後ろにはいつの間にかアレクが立っていて…
なにしてるんだ?
なにしようとしてたと思う。
たぶん、きっと、アレクには俺がシェリルの寝込みを襲おうと見えたに違いない。その証拠にアレクは「邪魔して悪い」とかすごく見当違いな(いや実際ちょっとは当たってるんだけど)を言ってそそくさと部屋から逃げようとした
「待て待て待て待て!!待ってくれ!誤解だって、これは見間違いなんだアレク!」
「ご、ごめんルッツ、二人がそんな関係とは知らなくて」
「だから、違うってぇのー!」
「…ちょっと……朝から何、人の部屋でぎゃあぎゃあうるさいね…」
俺とアレクの話し声で目を覚ましたのか、シェリルがまだ眠たそうな目をこすりながらベッドから起き上がった
お前がもっと早く起きてれば
こんなぎゃあぎゃあ騒がずに済んだんだっつーの…!!
END
ここまでお付き合い下さってありがとうございました^^
私のとこのルッツは、いざ攻めの体制に入ろうとするとなぜか色々邪魔が入ってしまう体質のようです(笑)