□赤と青
1ページ/1ページ





チカチカ 青信号が点滅する。

横断歩道の白いラインの手前、俺と鬼道は立ち止まった。


月も星も姿を隠した深夜、人はいない。
車も一台も通らないが俺と鬼道は立ち止まった。



「まるで世界に二人だけみたいだな。」


街灯と信号機の光だけが二人を照らす。
聴こえてくるのは街灯がたてる無機質な音だけ。



「本当に二人だけだったら、お前はどうする?」

ゴーグルをしていない裸眼が俺をじっと見据えた。
不安か好奇心か、それとも別な何かか。
その瞳からは何も読み取ることはできない。


俺は視線を外して赤信号を見た。
鬼道の瞳と同じ赤。



両親や一之瀬、円堂や雷門、帝国の仲間も誰もいない世界。
たった14年しか生きていない俺が想像することは難しかった、だけど不思議と寂しさは感じなかった。



「別にそれでもいいんじゃない?」
「誰もいないんだぞ?」

相変わらず表情は伺い知れない。

「だって鬼道がいるだろ。鬼道はどうなんだよ?」



信号が青に変わる。
だけど俺達は立ち止まったまま。





「俺も、別にそれでもいい。」
「そっか。」

鬼道の赤い瞳が長いまばたきをした。







チカチカ また青信号が点滅した。
結局俺達は白いラインに並んだまま。




指先に鬼道の指が触れた。
音が止む。



赤から青に変わる間に

キスしよう







end
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ