□糖分補給
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シャープペンシルが紙を滑る音と、時を刻む秒針の音だけが響く空間。

プリントに羅列された数字とにらめっこをしていた俺は眼の疲れを感じ顔をあげた。
すると、ちょうど向かいに座っていた豪炎寺も顔を上げ、目が合った。



「そろそろ休憩にする?」
「そうだな。」


テスト前の休日。
あまりにも酷い円堂の成績のおかげで部活は休みになり、二人で勉強会をしていた。
場所は俺の部屋。
理数系の得意な豪炎寺に数学を教わり、代わりに俺は英語を教えていた。
(まぁ…、元々頭のいい豪炎寺に教えられるのは発音くらいだけど。)



「何か甘い物でも食う?」


疲れた脳には甘い物。
とよく言うので俺は冷蔵庫の中身を考えながら豪炎寺に尋ねた。

確かこの前お隣さんに貰ったメロンがあったはずだ。



「あぁ。」
「ん、じゃあメロンあるから持ってくるな。」
「いや、いらない。」


机に手をつき立ち上がろうとした所に豪炎寺の制止の声が重なる。

途中で動きを止めた為、変な姿勢のまま俺は豪炎寺を見て首を傾げた。


「メロン嫌いだっけ?」
「好きだ。だがこっちがいい。」
「へっ……?」



豪炎寺の腕が俺の後頭部に伸びて掴む。
そのまま力が加えられ引き寄せられたのは豪炎寺の唇。


「んっ……、」

豪炎寺の舌が俺の唇を割り歯列をなぞる。
口内を味わうように舌が絡まり唾液ごと吸われる。
ジンっ、としたもどかしい快感が体に広がり、名残を惜しむように唇が離れた。



「…急になんだよっ!?」
「糖分補給、だが?」


今度は豪炎寺が意地の悪い顔で首を傾げた。
普段はクールな豪炎寺だがたまにサラッとクサいことを平気でする。

そして俺はそれが照れくさくもありたまらなく好きだったりもする。





「まだ、足りない。」
「勝手にしろ……っ、」

また唇が重なった。











愛の糖分補給

end
 

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