文
□君の声で
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死ぬことに理由がないように、生きることにも理由なんてないのかもしれない。
そう思ったのは事故に遭った時だった。
生きているのか死んでいるのか分からない日々の中で、何度朝日が昇る度にこれは夢ではないのだと絶望しただろう。
何度眠れぬ夜を過ごしただろう。
いっそ何もかも諦めてしまえば
いっそ死んでしまえば
どんなに楽だったか
でも、君と過ごしたあの季節を思い出す度に、君の声を思い出す度に、そんな考えはどこかにいってしまうんだ。
「飛鳥!」
「どうしたんだよ、一哉。」
「サッカーしようよ!」
「またそれか〜?」
「ダメ?」
「やるに決まってんだろ!じゃ行こうぜ、」
『一哉っ!』
生きる意味や理由なんてちっとも分かりはしない。
ただもう一度、君の声で俺の名前呼んで欲しいから、
俺はまた立ち上がる。
end