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□無自覚症候群
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昼休みの教室。
同じクラスの土門と一緒に昼飯を食べて、その後特にすることもないからグダグダ会話中。
土門は気が合うし話しを聞いてくれるタイプなので一緒にいて楽だし何気ないこの時間が結構好きだ。
サッカー漬けの毎日の中だと最近気になってるアーティストだとか美味いラーメン屋だとかゲームのことだとか中学生らしい会話が案外楽しい。
今日はいつも土門にひっついている一之瀬が委員会でいないから普段より静かだ。
「染岡って、どんな子がタイプ?」
さっきまで昨日のお笑い番組の話をしていたはずが急に話が変わった。
最近土門の中でブームなのかここのところいつも飲んでいるカフェオレのストローにかじりつきながら瞳を輝かせている。
「タイプってお笑いのか?」
「そうじゃなくて、恋愛っ!好きな子とかいないの?」
意外と土門はこういった話が好きならしい。
しかも自分のことより他人の話が。
一之瀬がいると照れくさいのかあまり喋らないが二人だとたまにこういう話題がでる。
俺も健全な中学生だし興味がない訳ではない。
「好きなヤツはいねぇよ。……タイプかぁ〜…。」
今まで好きな人がいなかった訳ではないのにタイプとなるとよく分からない。
「見た目でも性格でも何かはあるでしょ?」
カフェオレを飲み終えたのか土門は乾いた音をたてながら何もない容器を吸った。
「う〜ん…、強いんだけど弱くてほっとけない…ようなヤツかな?」
「へぇ〜…、なんか特定の人を思い浮かべているみたいだね。」
土門が意地の悪い笑みを浮かべる。
「そんなわけねぇだろっ!!」
やましいことは何もないのになぜか強く否定してしまう。
「あっ、俺分かっちゃった。」
「何がだよ?」
「染岡の好きなタイプにぴったり当てはまるヤツ。」
「誰だよっ!?」
「あれ?気づいてないんだ。」
片っ端から頭に浮かぶヤツを当てはめるが誰も思い浮かばない。
「無自覚って……染岡らしいね。」
土門を見るとさっきまでの意地悪な笑みではなく優しい微笑みを浮かべていた。
刹那 白い何かが脳裏を横切った
けど輪郭がぼやけてまだ分からない
あと少し 無自覚なまま
胸にとどまる
白い彼
end
→あとがき