□2011.バレンタイン
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フワフワ












2月14日、バレンタインデー。


アメリカでは男性から女性に、日本では女性から男性に日頃の友情であったり愛情を形にする日。

毎年その地の風習に合わせてきたけど俺はどちらかと言うと貰う方がしっくりくる。

去年も義理も含めれば結構貰った方だと思うし。



でも今年はちょっと違う。

恋人がいるから誰からも受け取らないし、あげる準備も万端だ。



今は昨日作ったシュークリーム片手に鬼道さんの家の前で待ち伏せ中。


いつも学校に行く時間より一時間はやく家を出て来たからすれ違いはないだろう。

それに鬼道さんは雷門中に転校してからは徒歩だから車で通り過ぎられる心配もない。







待ち始めて10分。


大きな門が開き使用人の人達に見送りをされた鬼道さんが出てくる。




「おっ…はようございます!」



「あぁ、おはよう。」



緊張して思わず声が裏返ってしまった。

ってか鬼道さんももっと驚こうよ…。




「あの…今日バレンタインだから、これどうぞ!」



手に持っていた紙袋を押し付けるように鬼道さんに渡すと鬼道さんは笑顔で受け取ってくれた。




「ありがとう、すごく嬉しい。昼休みに食べてもいいか?」



「もちろんですっ!」



「それじゃあ行くか。」


鬼道さんは俺から受け取った紙袋を指定鞄に詰めて歩きだした。


今日も朝練があるからあまりゆっくりしている暇はない。


来た道を戻るように通学路を二人並んで歩いた。





「土門。」


しばらく歩いた所で鬼道さんがふと俺の名前を呼んだ。


「何ですか?」


「朝からお前に会えるのは嬉しいがどうしてあんな朝早くから待っていたんだ?」


鬼道さんが上目遣いに俺を見上げた。


「あー…、一番に受け取って欲しかったんです。」


「……?」



「きっと鬼道さんはたくさん貰うからせめて一番早く渡したかったんです。恋人の意地ってヤツかな。」



首の後ろに手を置きながら鬼道さんの瞳をゴーグル越に見つめた。


黒いレンズに遮られた瞳は何色か分からないがしっかり俺をとらえていた。



その視線が外れると鬼道さんははっきりと言い切った。


「俺は誰からも受け取るつもりはないぞ。」


「えっ?」


「お前以外いらないに決まってるだろう。」



嬉しいなんて鬼道さんが好きな女の子に悪いかな。

でも嬉しいものは嬉しい。






「鬼道さん。」



「何だ?」



「好き。」









ふくらむ気持ちはフワフワシュークリーム


甘い気持ちはチョコカスタード











end


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