TOV

□ラブラブちゅっちゅ
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ピンポーン…



ドタバタと階段を駆け降りて来る音が聞こえればドアが開いて僕の大好きな人が僕を出迎えてくれる。

とても嬉しそうな顔をして。





『ラブラブちゅっちゅ』









「ユーリ、外晴れてるから出かけないか?」



ユーリの部屋に入った僕は、定位置のクッションに座わりベッドに向かうユーリを目で追う。

……他は見ないようにしてるんだ。だってユーリの部屋は散らかっているから。
本当は片付けたくてウズウズするんだけど我慢する。あまり煩いことは言いたくない。だってせっかくニ人きりなのだから。

…ウズウズ。


ユーリはパフッとベッドに仰向けに倒れた。



「今日は部屋でまったりしようぜ」


「今日も、だ。この前もそうだったじゃないか。公園にでも行こうよ」



目の前のローテーブルに肘を付き口を尖らせる。



「そんなかわいい顔してもダメ」


「そんなつもりはないけど…」


「菓子食う?」


「……は?」



いきなり話題を変えられ余計に唇が前に突き出る。

そんな僕を見ることなくユーリはベッドの下の引き出しを開けた。
中身は大量のありとあらゆる甘ーい菓子。

ユーリは本当に甘いものが好きだなぁ。引き出し1個丸々使っているのを最初に見た時は…正直少し引いた。
でもパクパク食べるくせに太ってないなんて、カロリー消費は一体どうしているんだろうか。



「僕はいいよ」



…言っておくけど、体型気にして食べないわけじゃないからね。



「あ、そ。食っといた方がいいと思うんだけど…」


「え?」


「何でもねぇーよ」



そう言われると気になるじゃないか。
ユーリの方を横目で見たけど、ユーリはベッドに寝転びポッキーをぽりぽり食べている。
食べかすが落ちるよユーリ…

ウズウズ。我慢。



「ねぇユーリ、外…」


「フレン、こっち来いよ」


「無視しないでくれ」



はぁと溜め息を吐きながらもユーリに近づく。



「悪いって。公園デートは次回な。約束」


「その言葉は信じられるのかな?」


「う…、あったり前だろ」


「…じゃあ信じる。で、何だい?」



僕はユーリの寝転ぶベッドの横に膝をついた。


そして差し出された。



「やる」



ユーリの手にはポッキーが1本。



「いや――」


「こうしたら食うだろ?」



いらない、と口を開いた途端、あろうことかユーリは僕にくれると言ったポッキーを口に入れてしまった。

別に食べたかったわけじゃないけど。



「僕で遊ぶの楽しい?」



ユーリはさっきから僕のこと不機嫌にさせてばっかりだ。



「違うって。ほら、そっち銜えんのっ」



ポッキーの先端を歯で挟みながらチョコの付いていない柄の部分を指差す。



「本気で言ってる…?」


「本気。超本気」


「…嫌だって言ったら?」


「んー…昼間の公園でセックス」


「絶対にいやだ」



ポッキーを口に銜えながらモゴモゴと話されキリッと言われたって不愉快になるだけだ。

こんなことを拒否しただけで青空セックスだなんて不釣り合い過ぎる。
何があってもそんなことは赦さないが。



「銜えて食べ進めて行けばいいんだな」


「おっ。珍しく乗り気じゃん」


ユーリが言うと冗談に聞こえないんだ。
公共の場でそんなことはしないと信じてるけど、やらないと完全に言い切ることが出来ないのは僕がユーリを愛していないからではない。
それはまた別問題だ。

ユーリの公園青空セックス計画絶対阻止。


若干の戸惑いと羞恥はあったが意を決してユーリの銜えているポッキーの柄を、ぱくっと口に含んだ。

思ったより顔が近かった。



「先に離れた方が負けな」


「は?」


「その方がおもしろいだろ?負けた方は勝った方の言うことを1つだけ聞くこと!」


「そんなっ…!」


「スタート!」



いきなりのユーリの合図で始まったポッキーゲーム。

ユーリはポリポリとゆっくり、しかし確実にポッキーを食べ進め僕に接近してきた。

僕が固まっているとニヤッと不敵な笑みを投げかけてくる。



(負けていられない!)



僕も負けじと食べ進めた。
どんどん縮んでいく、ユーリとの距離。

あと、ひとくち。

ひとくちでその距離はゼロになる。



「降参しねぇの?」


「し、しないっ」



近距離でのモゴモゴしたやり取り。

思ったより緊張しているみたいで、目を開けていられない。

目を開けていれば嫌でも視界に入ってくるユーリの顔…
漆黒の瞳に捕らわれてしまえばもう逃げ出せない。



「んじゃ最後の一口どうぞ」


「へ?僕が?」


「出来ないなら負けな」


「…わかったよ」



最初から覚悟してたんだ。
仕方ない…


僕は最後のひとくちを食べようと口を開いた。



「んン…っ!」



僕は驚きで目を白黒させた。

少し口を開いた僕の唇にユーリの唇が覆いかぶさってきたのだ。


逃げようにも後頭部を押さえられているため動くことが出来ない。

もともと短かったポッキーはユーリの舌によって僕の口に押し込められた。
しかし上手く噛めずにチョコレートだけが溶け、キスを甘くする。


そして口の内で暴れ回るユーリの舌が僕の舌をも巻き込み犯していった。



「ん、あっ…ユ、リ」



クチュクチュ、と音が支配するなか、フレンは酸欠によって意識が朦朧としていた。

懸命にユーリの胸元を叩くと「あ…」と気付いたように唇を離してくれた。


僕は呼吸が乱れベッドに寄り掛かかる。必死に口に残っていた柄を噛んで飲み込む。
そのままユーリを見上げれば顔をニタリと歪ませて、



「フレン、その顔えっろ」


「…誰のせいだ、誰の」


呼吸を整えながらベッドに顔を埋めると、ユーリが僕の髪に指を絡ませ梳くとそのまま掌を頬に滑らせ顔を上げさせられる。



「していい?」


「一応聞くが、何をだい?」


「セックス♪」


「嫌だ。」


「速答することはねぇだろ。負けたんだから俺の言うこと聞いてくれんだろ?」


「えっ!さっきの僕の負けなのか!?」


「当たり前だろ。フレンが先に降参したんじゃねぇか」



ユーリはまた嫌らしい笑いを浮かべ、僕の手を引っ張ってベッドに沈めさせた。



「うわああぁ…!」


「堕ちちまえよ」


「ユー、リ!!」


「ほら…」


「あ、ぅ、ちょ……ユーリ、の馬鹿あぁぁぁぁぁあああ!!」








【つづ…く?】

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