BSR

□紫の花は愛と共に散る
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  死ぬなら君に看取られて逝きたいな。
 ああ、君は僕が嫌いだったよね。
 僕も嫌いさ、君なんて。
 どうして好きになってしまったんだろうね。



  「半兵衛!おい半兵衛!大丈夫かよ!?」

  「げほ、がはっ………大丈夫さ、心配いらないよ」



  いつだって君に見せていたのは“完全な自分”。
 こんな不完全な姿を見せるわけにはいかなかったんだよ。
 ごめんとは思わないけどね。

  それよりも、



  「君は、どうし、て…そんな…泣き、そうな…ッごほっ…顔を、してるんだい?」

  「だって半兵衛!お前、死にそうな…ッ」



  ああ、そんな顔をしていたら勘違いしちゃうじゃないか。
 僕を好きだから心配してる、僕がいなくなったら君には何もない?

  ねえ、僕は君にとって、彼女のような存在になれたかな?


  …あはは、そんなわけ、ないだろうけど。
 ああ、でも最期に、君の中に僕をしっかり残しておきたいな。

  僕が生きていた証を、


  「慶次君、」



  ああ、僕には血の味しかしない。
 君の唇はさぞかし甘いのだろうに。
 残念でならないよ。せっかく、やっと君に口づけをしたのに。



  「はん、べえ…?」

  「そろそろ、君も…分かったんじゃ、ないかな?」

  「ッ…今まで俺のこと、嫌ってるみたいな…態度をとってきたくせして今更ッ、
こんな、時に…そんなのって…」



  なんで泣くんだい?
 全く、君は泣き虫だね。これくらいで泣いていたら…これ以上に辛いこと、乗り越えられないじゃないか。



  「ほ、ら…泣き止み、な…って。僕、は…君、のこ…、ッう、」



  咳が止まらなくなって、最期にいいたいことが、言えない。


  ああ、神様は僕にこの言葉を言わせたくないんだね。
 そんなことしたって、僕の気持ちは既に慶次君に伝わってるよ。

 それでも、伝わってても、言葉で、伝えたいんだ。


  だから、



  「半兵衛!!!」



  言わせて、よ



  「はん、べ…」



  “好きだ”って、



  この、三文字を






紫の花は愛と共に散る











fin....

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