DRRR!!
□我田引水
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腕の中で震える小さな身体は、俺ではないものを求めていた。
「い、ざやさん…ごめんなさい…っ」
「謝らないでいいよ帝人君、泣きたいときは泣いていいんだから」
虚ろな目で涙をぽろぽろ流す少年は俺の心情も知らずに俺の胸に縋り付く。
鈍感なのにも困ったものだよね。鈍感っていうのは武器になるんだからさ。
泣きつく帝人君の背中をあやすようにぽんぽんと叩いている内に、帝人君は落ち着いたようで押し殺したような泣き声は聞こえなくなった。
「臨也さん…」
帝人君は相変わらず俺の胸に顔を押し付けたままだったから表情は伺えなかった。
それでも今この場に感情がないことくらい、俺には分かる。
「何?帝人君」
いつもの声で返せば、帝人君は感情のない声で、呟いた。
「臨也さん、僕を……――――」
続いた言葉は、俺にとって又とない機会。
帝人君に顔を見られてないことをいいことに、俺は口許を緩めて帝人君を抱きしめた。
「俺は帝人君を捨てたりしないから」
もう、帝人君は俺のものだよね?
帝人君は裏切った君じゃなくって俺を選んだよ。
そう自分に言い聞かせて真実はぐしゃぐしゃに丸めてごみ箱に捨てる。
真実なんて今の俺にはいらないよ、今の真実はいつか嘘になるんだからね。
薄く笑って帝人君の顎を持ち上げ、自分の唇を帝人君のに重ねた。
我田引水
fin.