薄桜鬼 小説

□雪解け
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長編の番外編です。
死ネタなので……苦手な方はご遠慮ください。




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斗南の寒さが堪えたのか、ここ最近千鶴の体調が思わしくない。



斎藤は暫く仕事を休んでいたが、さすがにこれ以上休んでは迷惑をかけてしまうからと千鶴に説得された。納得出来なかった斎藤は、早めに帰るという妥協策で折れた。


今日も約束通り早めに帰路に着いていた。
斗南での暮らしは今年で5年を迎えた。
2月の風は冷たく、周りは真っ白な雪景色。


慣れたとはいえ、油断していると簡単に体調を崩す。現に近所に長年住んでいる夫婦も先日風邪を引き、旦那は悪化して肺炎にまでなってしまった。
幸い千鶴に知識があったので快復はしたが、今度はそんな千鶴が倒れてしまった。

近くに医者がいないから重宝されていた千鶴が倒れたと知れ渡るには、そう時間は掛からなかった。


その日の内に、近所から見舞品が届いた。


野菜や獣肉等の食べ物には有り難くて頭を上げられず、小さな子供が真っ赤な手に手折られた南天を握りしめて来た時は泣きそうになった。
南天の赤い実を見て、千鶴も泣きそうになっていた。


無病息災……南天の実に込められた想いに、早く良くならなければいけませんねと千鶴は微笑んだ。



けれどそれから半月経っても千鶴の体調は良くならず……むしろ悪化していった。



元から真っ白だった肌は透き通ってしまいそうな蒼白さになり……真っ赤だった唇は色素を失い……ふっくらとしていた頬には痩せこけた印があった。


そんな姿を目にする度、斎藤は考えてしまうのだ。


自分が斗南に行くと言わなければ……と。
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