薄桜鬼 小説
□掴む先には
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最近暑さのせいで魘されてばかり……
見るのは同じ夢で
ヒラヒラと舞う蒼い服の裾を必死に掴もうとする夢
追いかけて
追いかけて
結局背中の端すら見えなくなって
私は暗闇の中泣き叫ぶの
"置いていかないで!"
そして目が覚める。
汗と涙でぐちゃぐちゃになった自分……
夢で良かったと安堵しているはずなのに、何か大事なものを失ってしまっている気がして涙が止まらない。
そんな日々が1ヶ月も続き、流石に寝不足が祟って夏バテ気味な私は、気分転換にと映画館に来ていた。
スカッとするアクションもいいけれど、ラブストーリーも捨てがたいなぁ……
次々と現れる映画の上映情報を目で追っていると、視界の端に見覚えのある何かが映った。
何だったかも思い出せないまま勝手に身体が走り出していて……
もう離しちゃ駄目だと心が叫んでる。
あと少しで届く…………
必死に手を伸ばそうとした瞬間、私は躓いていた。
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