元カレは、人気アイドル・中編
□初めての夜・・・
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私は彼の舞台にひきこまれていた。
彼が演じる少年の苦悩が、底なしの孤独が、
胸を締め付けるように伝わってくる。
生身の人間が演じる芝居を初めてみたけど、
ここまで、心を揺さぶられるのは、ハルキの存在だからだと思う。
クライマックスで、兄を失うシーン。
すべての心の枷を失った喪失感に、和也が涙するシーン。
シーンと静まり返った会場に、彼の嗚咽だけが、聞こえる。
感情を押さえた演技が、悲しみの深さをあらわしていた。
会場からもすすり泣く音が、あちこちからする。
私も、知らずに涙があふれて、止まらなくまっていた。
ハルキはすごい・・・
こんなにも、人の感情をリアルに表現している。
自分ではない、全くの別の人格なのに。
そして、なんて、いろんな顔を持っている。
舞台の上の彼は、なんだかとても遠い人のように思えた。
そして、カーテンコールで、初めて、素の笑顔にもどった。
私はその笑顔に、やっと、本当のハルキに会えた気がした。