Drop

□タカラモノ
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宣告は受けていた。
余命、四ヶ月。
それが四ヶ月前の事だとしたら、僕の命は、




「死にたく、ないよッ..」



流れ出る涙を止めることはできなかった。
臆病だ、って知ってる。
これじゃ僕が死んだとき音梦を苦しめることも知ってる。
それでも涙は止まってくれない。




「死にたくな..い、音梦と一緒に..いた、い..よ...」



あぁ、息まで絶え絶えになってきた。
過呼吸かな、なんて呑気に考える。



「落ち着いて、依令。大丈夫、ほら息吸って」



それでも冷静な音梦が羨ましかったりするんだ、僕。
きっと僕が死んでも音梦は笑っていてくれるから



「はぁッ...はぁッ...音梦....」

「おいで、今度は私が依令を助けるよ..」



そっと抱き上げてくれる音梦と僕は親と子状態。
知らないうちに大人になった音梦は僕をおいてゆく。


二人の関係を深く問いつめた事は一度もなかった。
彼氏彼女、は何故か結びつかなかったから。



「私ね、依令の事凄く好きだよ」

「な..に、それ....別れ..のあいさ..つ?」

「フフ、違う」


抱きしめてくれる音梦の体は暖かくて。
自然と眠くなってくる。



「余命、四ヶ月...」

「...知ってる。」

「なんで知ってる...の」

「夢で、聞いたから」


眠くなってきて、何を話したら良いのか分からない。



「今...寝たら..もう、起きない...のかな」

「私は、依令を楽にさせてあげたいだけだよ...」



何時も、自分より他の人の事を考えてる。
僕がどれだけ死にたくない、って言っても音梦は眠らせてくれるんだね。
後から自分を責める事になっても。



「...ッ...音梦....今..凄く..幸せだよ...」



だからさ、泣かないでよ。








今迄考えた事もなかった事、生きる意味。
音梦と会えた事が生きる意味だったのかもしれないよ、今そう思う。


たとえ、僕が死んだってまた会えるって知ってるから。





「依令、ごめんね、今迄一緒に居られなくてごめんね、
 泣かせちゃってごめんね、ごめんね、ごめん..」



泣かせちゃったね、音梦の事。
悲しむって知りながらも僕は一人で死ぬのが怖かったんだ。
暖かい所を望んだ僕は、終には君のところにきてしまっていた。
高望みだって知ってたけど、それしか思い浮かばなかったんだ。


世界で、一番大切な存在。
僕の、大切な人。



生きる意味を教えてくれたのは、音梦の方だったんだよ。




















































「......あ、り...がと....う...」













































それが、僕の最後の言葉だったとしても一番良い選択だと思うよ。








世界で一番の、貴女の為に_______________________________________________________________。
























僕は、星になるんだ。

















ーFin.ー



〈依令....ッ!!〉

僕は、幸せだったから。

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