□風邪っぴき
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最悪。もう本当に最悪だ。
まさか風邪なんてものを引いてしまうだなんて…。風邪なんて何年振りだろうか。
その何年振りかの風邪が、私に猛威を奮っていた。

医者が言うには、何年も風邪を引いていなかったせいで、風邪に対する耐性が付いていないらしい。長引くかもしれないが、インフルエンザじゃないらしい。熱が38度越えなのに、そんな馬鹿な。

医師にも言われ、担任にも言われ、今日一日、学園を休ませてもらった。
本当に最悪だ。
しかも授業放棄、もといサボタージュした翼君と美咲が、わざわざ寮に来て、厨房まで借りてお粥を作ってくれた。申し訳ない限りである。
因みにお粥は翼君が手際よく作ってくれた。翼君料理出来たんだね、と言うと、苦い顔をされてしまった。多分、要君が関わってるのではないかと思う。なんとなく、そう思った。


そのホカホカとしたお粥を口に含む。
梅の果肉と、塩の味で唾液が分泌される。喉が上下した。何と食欲のそそることか。
ほんのりと紫蘇の香りがする卵粥は、それはそれは絶品だ。私好みの味がする。


「じゃ、私ら帰るよ?」
「ん、わざわざごめんね」
「謝んないの!こういう時はありがとうだって」
「友達心配すんのは当たり前だっての!大事にな」
「あはは、ありがとうね」

二人が居なくなって、少し寂しいと思ってしまった。風邪には早く治ってほしいものである。




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