小説 薄桜鬼 短編集

□うたかたの恋
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「近藤さん、私も皆さんと一緒に浪士組に参加したいです!」




共に浪士組に参加する意志を、近藤勇に懇願した山内沙耶だったが、近藤からの返事は、求めていたものとは異なっていた




「すまんが、お前を連れていくわけにはいかない。これからは女子として幸せな人生を全うしてほしい。」





いつもの優しそうな表情に困惑した雰囲気を漂わせながら、近藤は沙耶を諭す





「わたしの剣の腕は認めてくださったじゃないですか?練習も男女分け隔てなくなさっていたのに、なぜ!!こんなときだけ性別だけで判断するなんて納得できません!」




怒りと悲しみを織り交ぜ、沙耶は涙を流しながら訴える




「浪士組の上洛は、沙耶が考える以上に険しいものだ。俺達のように、気がしれている者同士の上洛であれば、問題はないが。俺達だけじゃない。女子のお前を同行させるのは危険すぎる。わかってくれ・・・」






近藤は、沙耶を説得するため額を床についた





いつも活気であふれていた道場内も、今日は寂しさを伴っていた






近藤さんの土下座姿を目の当たりにし、沙耶は自分のことを心底心配していることを悟った





「・・・顔をあげてください・・・わかりました・・・・・。でも・・・」




途中までで言葉を止めた






「でも?」





顔をあげ、言葉の続きを尋ねる





「・・・いえ・・・・。絶対、死なないでくださいね!みなさんも」






沙耶は、後で個別に上洛することを言葉にせず、伝えたい言葉を選び出したのだった





道場の入り口に、様子を見ていた上洛参加組の面子に言葉をかけて、笑顔を見せた






「おう。沙耶も元気でな!次に会う時は女物の着物を着てみせろよ〜!お前、いっつも袴ばっかだし。」





藤堂平助が、沙耶に声をかける






沙耶より歳は2個下だが、先に入門したため、兄弟子である




他の隊士たち・・・土方、山南、井上、原田、永倉・・・も、それぞれ沙耶に別れの挨拶をしていった





「じゃあな・・・・次はいつ会えるかわからんが、元気でいるんだぞ!」




門出、沙耶に声をかけ終えたあと、嫁のつねや子供たちにも声をかけ




同士達と道場を後にした





(必ず、上洛しますから・・・待っていてください)




彼らの背中を見つめながらそう心の中で呟く沙耶だった
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